検索窓
今日:5 hit、昨日:18 hit、合計:115,274 hit

34 仮説〈憂太side〉 ページ34

「大丈夫? 寒くない?」

「うん、平気。風が凄く気持ちいい」


5月と言っても、朝の内はまだ肌寒い。

今日は比較的穏やかなそよ風だったから、硝子さんも外出を許してくれた。


『見た目は元気でも、身体の中は修復途中。まだ何度か治療を施さないといけない状態だ』


とのことで。

術師と違って呪力操作が出来ない非術師のAちゃんには、一度の反転術式は身体に負担がかかり逆に危険。

硝子さんはこの1週間、何回かに分けて少しずつAちゃんを治療していた。


「憂太の妹さん、中学生だっけ? 連絡してる?」

「うん…まぁ…向こうから連絡来たときだけ…」


Aちゃんの柔らかな髪が、緩やかな風にふわりと(すく)い上げられたのを視界の端に、二人でお互いについて語り合った時間を思い返す。



――…

Aちゃんに、『憂太のこと、教えて?』と、誘惑するみたいに求められて、ポツリポツリと高専に来ることになった経緯や家族のことを話した。

里香ちゃんとの関係、痛ましい事故のこと

里香ちゃんへの僕の想い、僕への里香ちゃんの想い

里香ちゃんの死を拒んだ結果、彼女の魂を現世に留め、僕が呪いにしてしまったこと

自らが被呪者となったことで両親に怖れ疎まれて、今も絶縁状態であること

それでも妹だけは、僕に寄り添ってくれたこと

普通高校での事件がきっかけで高専に編入したこと
五条先生が僕に居場所を与えてくれたこと

数ヶ月前の呪術テロ『百鬼夜行』
その誘因が僕であること

解呪した里香ちゃんの残した強い想いが
外付けの術式『リカ』になったこと

その術式を無駄にしないために鍛練を重ね
経験を積むために長期任務を受けて普通高校へ潜入したこと

そこで、Aちゃんに出逢ったこと……

…――



もしかしたら全ての出来事が、Aちゃんに出逢う為の“必然”だったのではないかと思う。

だから僕は、ひとつ確認をしなければならない。

実はこの2日間、Aちゃんには内緒で、任務先の高校に戻って調査を続けていたんだけど…

その途中、以前祓ったはずの強い呪いが、Aちゃんの自宅近くの公園に再発現していた。

祓っても戻ってくるってことは…


『呪いの発生理由は基本的に人間の負の感情の(おり)だけど、必ずしもそれだけじゃない。それは憂太が一番分かっているでしょ?』


五条先生の特別授業を思い出し、僕なりの仮説を立てた。

それを確認して暴くことは、Aちゃんにとって酷く辛い事かもしれない。

一瞬だけ躊躇(ためら)い、両手を握って心を奮い立たせた。


*

35 青天の霹靂→←33 トラップ〈憂太side〉



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (87 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
244人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 乙骨憂太   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年3月6日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。