32 知りたいんです ページ32
正直、憂太を好きなのかどうかはまだ分からない。
でもこのまま一緒にいたい。離れたくない、とは想う。
憂太の傍にいてみたい…って、心が主張する。
だから、自分の欲望に素直に従うことにした。
とりあえず、この高専にいる間に基盤を作っておかないと。
「知りたいんです。自分の身に何が起きたのか。憂太が何を見て何を感じて何を想って戦っているのか…ちゃんと理解したいんです」
憂太の不在時を狙ったかのように私の様子を見に来てくれた、憂太の本来の担任、五条先生に訴えた。
真っ黒なアイマスクで両目が隠れているから表情は分かりづらいけれど、私の必死な言葉を受けて、ふっと口元が綻んだ。
「なるほど。青春だね♪」
「え…？」
「いいよ。呪術のこと、特別に僕が教えてあげる」
「本当ですか！？」
呪術の専門の先生に教えてもらえるなら完璧だ。
身を乗り出した私に、五条先生はズイッと顔を近づけ、長く意外と伏しくれだった男らしい人差し指を立てて私の唇に触れた。
「でも、僕こう見えて超多忙なんだ。そして君はまだ学生。だから君への特別授業は毎週土日の２日間、２時間ずつだよ」
「はい…」
艶のある声と爽やかな香り、魅惑的な雰囲気に飲まれそうになる。
なんだか凄く魅了する人だな……距離も近い。
「んじゃ、君のこと見せてもらえる？」
「えぇっ！？」
見せる！？ 何を！？
まさか脱げとか言うんじゃ…
思わず身構える私に口元だけで微笑んだ五条先生。
両目を隠しているアイマスクを、さっき私の唇に触れた人差し指で、ゆっくりとずらして顎まで落とした。
「え…凄く綺麗…」
現れたキラキラと輝く宝石みたいなアイスブルーの瞳に釘付けになる。
うっとりするほど美しい顔を更に引き立たせる、空が広がる煌めく瞳にじっと見つめられ…
「うん。最低限の呪力はあるみたいだね。訓練次第で呪いを視認出来るくらいにはなれるかも」
「本当？」
「ほんと。確かめてみる？」
再び五条先生に距離を詰められ、指先で顎を持ち上げられて視線が合った瞬間。
「五条先生！ 何してるんですか！？」
五条先生の背後から焦った表情の憂太が現れた。
「憂太、おはよう♪」
対する五条先生は憂太の剣幕を意に介さず、緩い態度のまま。
「Aちゃんから離れてください、五条先生」
五条先生を威嚇して、護るように憂太が割って入って私を背中に隠す。
「憂太、平気だよ私。少しお話してただけ」
「そうだよ、落ち着いて。なんっにもしてないよ僕」
はああぁぁ――
憂太の盛大なため息が病室内に響き渡った。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
