31 心の拠り所 ページ31
私を想っての言動をされると、途端に愛しさが募るというか…
２日も憂太と会っていなくて、
付き合わない宣言したけれど、私の心が憂太に惹かれているのは事実だし。
高専に来た当初は抱きしめたりキスしたり、躊躇いなくスキンシップがあったのに、最近は２日間会いに来てくれなかったりと、距離を置かれている気がした。
知らない場所で、家族とも面会謝絶。
病室から出ることは許されていなかったから、本当は凄く心細かった。
この場所では、憂太だけが私の心の拠り所なんだもの。
今日、２日ぶりに顔を見て、変わらない憂太にとても安心したのは明白。
だから…
一歩踏み出して距離を縮め、憂太の両腕の間に差し入れた腕を広い背中に回して、ギュッと抱きついてみた。
重く弾む早まる鼓動を聴くように、引き締まった胸に頬を押し当てて。
「っAちゃん！？」
慌てる憂太が僅かに後ずさったけれど、私は目をつぶって抱きつく腕に力を込めた。
「…ああぁぁ！もぉッ」
呻き声に続いて、背中と肩に回された逞しい腕に強く抱きしめられる。
暖かい…
陽だまりみたいな温もりと匂いに、
「こんな風に可愛いことされると、僕だって男だから抑えが利かなくなるよ」
「…ごめん…」
耳に寄せられた憂太の声は詰まり、少し震えていた。
でも今は、安心できる温もりが欲しい。
もし憂太の理性が吹っ飛んだとしても、強行突破はされないし、私が嫌がることは絶対にしないって信用できるから。
「ねぇ…あの男達の話なんかより、憂太の話が聞きたい」
「え…僕の…？」
「うん。憂太のこと、教えて？」
少し腕の力が緩んだ憂太を見上げた。
その瞳が一瞬だけ悲哀に揺れ…
すぐに甘さを含んだ。
「じゃあ交換条件。Aちゃんの事も教えて」
「ええ…うーん…分かった」
「何でちょっと悩むの」
小さく笑う憂太に自然と私も笑顔になる。
こういう穏やかなやり取り、久しぶり。
私に接する男の子はみんな、私と身体の関係を持つことが目的だったから、ゆったりとした甘い雰囲気は皆無。
二人きりになれる場所では、すぐに襲いかかってくる。
それが『男』というものだと思っていた。
「憂太はどうして高専に通うことにしたの？ 元々、呪術師を目指してたとか？」
けれど憂太は、今まで出会った男の子とは全然違った。
強引に身体の関係を迫ったりしない。
“無償”で私を助けてくれる。
だからもう少し知りたくなった。
私とは違う世界に生きている彼を――…
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
