25 傍にいて欲しい〈憂太side〉 ページ25
「でも結局1人じゃなかったよね」
「それは…ッ」
言葉に詰まったAちゃんは、ついに俯いてしまった。
違う。こんな事が言いたいんじゃない。
それに僕は…
たとえ、こんな強引なキスを許されたとしても、Aちゃんにとっては何者でもないんだ。
「ごめん……責めるつもりじゃなかった…」
さっきまでとは打って変わって弱々しい声音と小さな声でそう告げると、Aちゃんは俯いたまま僕の胸にしがみついた。
え…いや、ナニコレ…
かっ可愛い…ッ
え、抱きしめてもいいってこと…!?
…ってゆうか…
こうして改めて密着すると、Aちゃん凄く小さい…
華奢って言うか…抱きしめたら壊れそう…だ…けど…
頼りないAちゃんの背中に手を伸ばし、ゆっくりと両腕を回してそっと胸に囲い抱きしめた。
「憂太…ありがとう…助けてくれて…」
…柔らかくて…温かい…
Aちゃんの甘い香りに当てられて、脳が蕩けそうだ。
「うん…呪いを祓うのが僕の仕事だからね…」
「そっか…」
「…Aちゃん?」
Aちゃんの身体が小刻みに震え始めたのを感じて呼びかけた。
「…ごめん…なんか、今頃…怖くなっちゃって…」
「うん…」
震える涙声…自然と抱きしめる腕に力が入る。
呪いが何かも知らず、見えもしないAちゃんにとって、自分の身に起きた現象には恐怖を覚え、あの男達には嫌悪感しかないだろう。
「もし、憂太が来てくれなかったら…私…」
あのまま何も処置をしなければ、おそらくAちゃんは呪いで命を落としていた。
無知な呪詛師と接触した非術師には良くある状況と結末だ。
けれど、非術師のAちゃんが呪いについての詳しい情報を知っているはずがない。
彼女の怯え具合に、ひとつの答えが浮かんだ。
「もしかして、硝子さんに聞いたの?」
そう問いかけると、Aちゃんはコクンと頷いた。
「怖がることは言わないでってお願いしたんだけどなぁ…」
「違うの。私が詳しく知りたいって言ったから…」
良くも悪くも硝子さんは、オブラートに包むことなく事実だけを淡々と患者に伝えるから、聞かされた方は無駄に恐怖を植えつけられる。
「大丈夫。Aちゃんのことは僕が護るから」
非術師のAちゃんと一緒に生きるのは、酷く困難な道かもしれない。
僕の傍に居れば絶対にこの先、怖い思いをさせてしまうし危険にも巻き込んでしまう。
けど、それでも。
護ってみせるから、これからもずっと一緒にいて欲しいって想う。
3回目のキスはそんな願いを込めて、ゆったりと甘く啄み微笑んだ。
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年3月6日 22時