23 キス、したの？ ページ23
「なにこれ…」
丸一日眠って動けるようになった私は、病室のチェストに置かれていたスマホを手に取り、私から憂太宛ての不愉快極まりないメッセージを削除した。
「彼氏じゃねーし。あんの勘違いクソバカクズ野郎…」
しかもそれを憂太に送るとかあり得ない！
平手打ちくらいは一発食らわせたい。
「Aちゃん？ 何かあった？」
「ひゃっ！ 憂太！？」
突然聴こえた背後からの声に、軽い悲鳴が上がる。
気配消すの止めて！
「ごめんね。ノックしたけど返事がなかったから…」
「あ、ちょっと考え事してて！ それより昨日、私のスマホで勝手に送られたメッセージ、削除してくれない？」
「…あぁ、うん。…三人とも彼氏だったの？…」
「え、違うよ！？」
天然！？ 純粋！？ あのメッセージ信じたの！？
「でもほら、彼氏って書いて――」
「――勝手に言ってるだけ！ そんな関係じゃないから！」
「本当に…？」
不穏な光を纏ってじっと私を見据える瞳を、真っ直ぐに見つめ返す。
「本当に！ まったく！ 間違いなく！ 絶対！」
たとえ彼氏だったとしても、仲間呼ばれて色々好き勝手されそうになった事実だけで充分、死に値する重罪。
きっと殺されていても感情は少しも動かない。
「そっか…でも助けに行くのが遅かったから、呪い籠められる以外に何かされなかった？ 触られたりキスされたり…」
「キス…」
つい零れた呟き。
してないと否定は出来ない…
…って、別に隠す必要なくない？ 憂太も『彼氏』じゃないんだし。
でも、なぜか憂太の雰囲気が急に重苦しくなったんだけど…なんで？
「…キス、されたの？」
「それは…えーっと…」
「キス、したの？」
「えー…ははっ…まぁ、前に一回だけ…」
普段より低い声と抗えない眼差しに、つい本当の事を告げたら…
一歩一歩近づいてきた憂太に追い詰められ、
「…へぇ…どんな風に…？」
「何でそんなこと…」
後ずさる私の歩みは背後のチェストに阻まれる。
「…憂太？」
憂太はゆっくりと私を囲うようにチェストに両手を付いた。
見上げるとすぐ近くに憂太の顔が…ッ
「答えて。どんなキス？」
「どんなって…普通に触れるだけの…」
「そう…」
「！？」
憂太の顔の近さに固まった私の顎が指で
１秒、２秒、３秒…
「こんな感じ？ それとも…もっと長かった？」
「ね…憂太、どうし――っ！？」
問いかけの途中。
今度はねじ伏せるみたいに塞がれた唇。
舌先でこじ開けられた隙間から、ぬるりと憂太が押し入った。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
