22 私情の行方〈憂太side〉 ページ22
「あぁ、ごめん。そこまで脅かすつもりなかったんだけど…」
刀を振り抜いて呪詛師３人の様子を
最近まで非術師。正規の術師に会うのも僕が初めてだろうな。
まぁ、僕が彼らを殺そうとしたのはブラフだったけど、少し…いやかなり私情が入った。
その結果、彼らには僕が『本気』で自分達を殺そうとしていたように見えたらしい。
だって…さ…
Aちゃんに疚しく触れたであろう彼らに、はらわたが煮えくり返るほどの熱い憤りを覚えた。
誰も彼もAちゃんに触れて欲しくない。
僕だけがその権利を持っていたい。
あの時、どうにも制御できない、酷く強い想いが湧き上がった。
呪力操作に気を取られるくらい感情がどす黒く振れるのは初めてだ。
これって、独占欲…ってやつ？
いつのまに…僕…
『ゆうた、終わったぁ？』
「あ、ごめん。終わったよ」
思考の隙間に入り込んだリカの声。
振り返ると、ぐったりしたAちゃんを片手で抱くリカが、黒い闇の中から僕を見つめていた。
目…見えてるか分かんないけど。
「リカ、Aちゃんの様子は？」
『眠っちゃった』
「じゃあちょっとだけ…」
Aちゃんの肩に掌を当てて、流し込まれた呪いを祓い、反転術式で壊れた細胞を修復する。
僕は医者じゃないから、後のケアは硝子さんにお願いするとして…
「高専に連れて行くから、リカはそのままAちゃんを抱いていて」
『はぁい♪』
とりあえず処理班を呼ばなきゃ。
スマホで補助監督に連絡しようとしたその時。
「や！ 憂太。今、どういう状況？」
「五条先生！？ どうして…」
「うん、心配で見に来ちゃった♪」
離れて暮らす彼女が、何の連絡もなしに突然部屋に訪ねてくる時の言い方…
「あー…うん、なるほど…」
どう説明しようかと考えあぐねて言葉に詰まっていると、部屋を見回して状況把握をした先生は、納得したように頷いて口角を上げた。
「大体分かった。ここは処理班に任せて、僕達は一旦、高専に戻ろう。彼女、早く硝子に診てもらった方がいい」
「…っはい…ッ」
「大丈夫。すぐ元気になるよ」
Aちゃんの身体が呪いに侵食されたのは、僕の失態だ。
僕がAちゃんの呪力を見失わなければ、こんなことにはならなかった。
「…ごめん…」
眠っているAちゃんの手を握る。
「憂太。硝子に任せれば大丈夫だから」
「分かってます…でも…心配で…ッ」
「うん、青春！ いいね♪」
五条先生が満足そうに声を弾ませた。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
