20 結界術〈貴女&憂太side〉 ページ20
【Aside】
「いらっしゃい、Aちゃん。待ってたよ」
カラオケ店の指定された部屋に入り、笑顔で近づいた大学生の彼に頬を包まれた瞬間。
ズズズ…と、重苦しい質量が体内に入り込む感覚に耐えられず、足の力が抜けて重力のままその場に座り込んだ。
なに?…身体に力が入らない。
声も…出ない…
(――憂…太…)
離れていても私の気配を感じてくれるなら、僅かでもいい。声も届いて…
薄い意識の私を三人の男が、楽しそうにクツクツと笑い見下ろしていた。
「さぁ、Aちゃん。約束の『おうちデート』を始めようか♪」
それはまるで呪いの言葉のように私の脳内に沈んで…
じわじわと黒く広がり、思考回路を切断した――…
【憂太side】
「あの部屋だ」
3階中央の部屋。
しかも、疚しい呪力の種類が1つじゃない。
…3人…
「へぇ…複数でAちゃんに何をするつもり…なのかな…?」
エレベーターは使わず、階段を一段ずつ踏みしめて上りながら刀を取り出し、強く握りしめた。
やけに深く沈んで凪いでいる心に、どす黒い感情が渦巻くのが分かる。
沸々と湧き上がる…これは“怒り”だ。
それでも感情のコントロールは完璧。
無駄な出力はせずに、練った呪力は身体中を
『ほら見て憂太。帳も含めて結界ってさー、対象にした人間や物の全ての気配を隠すんだよ。凄いでしょ』
「何でも隠す…か…」
以前、五条先生が教えてくれた結界術。
領域展開に必要だからと教えてくれたのは、ほんの数ヶ月前だった。
それが今、Aちゃんに施されている。
もちろん結界を破る方法も教わったから問題はない。
結界の一部を溶かすように、自分の呪力を流し込むだけ。
どこかに穴が開けば、結界はシャボン玉みたいに弾けて、割れるように簡単に壊せる。
一瞬で大量の呪力を当てなければならないけれど、今の僕には呼吸をするのと同じくらい自然に出来るはずだ。
「それにしても…腹立つな…」
呪力の感覚からして全員男だ。
しかも、呪力の形状がぬめっとしていて酷く気持ち悪い。
女の子ひとりに対して数人で…って時点で既に嫌悪感しかないのに。
辿り着いた呪いが纏う部屋の前に立ち、揺らめく呪力の結界に手をかざした。
次第に濃い色が薄まって結界が解けていく。
結界を破りドアを開けると予想通り、
「は…? 誰だお前? つーか結界は――」
カラオケ店にいるくせに歌は歌っていなかった。
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年3月6日 22時