17 呪力感知と操作〈貴女&憂太side〉 ページ17
「私こそ…大きい声出してごめん。ちょっと考え事してて…」
私が苦笑いすると、憂太は「そっか…」と言ってへにゃっと頬を緩ませた。
あ、また…
そういう無防備な笑顔、やめて欲しい。
何か…色々と勘違いしそうになる…
「ところで、どうしたの？ もう帰ったと思ってたよ」
「あ…えーっと、ね…」
あなたを尾行してました。
…なんて言えない…
視線を逸らして巧い言い訳はないものか…と考えていたら…
「…なんてね…。知ってたよ。毎日僕に付いてきてたこと」
「え…」
「ごめん」と付け加えて、憂太は困ったようにニコッと笑った。
うん、可愛い笑顔。
…じゃなくて！！
え、知ってた！？ 私が憂太を尾行してたことを！？
絶対に気づかれてないと思ってたのに！！
「…な、んで…？」
「うん…Aちゃんの呪力の特徴、憶えたから」
「じゅりょく…？」
言葉の意味はよく分からないけど、憂太には離れていても私の気配が分かるってことは分かった。
【憂太side】
最初は訓練のつもりで、学校帰りに意図的にAちゃんから少し距離を置いてみた。
どこまで離れたらAちゃんの呪力を感知出来なくなるのか確認したかったから。
なのに…
「あれ？…ついてきてる…？」
一向に離れる気配がなかった。
それどころか、ちょっとずつ近づいてきている。
僅かに振り返り目線だけで後ろを確認すると…
サッ…と、廊下の曲がり角の先で黒髪が翻って隠れた。
僕に気づかれてるとは思っていないんだろうな…
そう考えたら小さな笑いが漏れた。
何故だろう…
Aちゃんの行動と仕草を可愛いな…って思う。
里香ちゃんに似ている容姿のせいかな。
里香ちゃんが生きていたら、Aちゃんみたいに魅力的な女の子に成長していたんじゃないかって。
どうしても重ねて見てしまう。
先日、思いがけず抱きしめたAちゃんの身体の柔らかさが甦り、疚しい雑念まで湧き上がってきた。
これから呪霊を祓うっていうのに呪力が乱れる。
『呪力の流れは一定かつ出力は最小限にしないと、憂太の場合、周りを破壊しかねない。それに、いくら呪力量が膨大でも肝心な時に呪力切れを起こすよ』
たまに突然、ちゃんと“先生”をする五条先生の言葉を思い出した。
そうだ。どんなに感情が昂ったとしても、僕の呪力操作はとにかく一定かつ最小限に留めなければならない。
通常時はそれをベースに、真希さん仕込みの体術と剣術を駆使して戦う。
呪力頼みにならないように80％の呪力をリカに預け、週に２回は五条先生に稽古をつけてもらっていた。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
