15 “はにかみ王子” ページ15
そんなわけで。
休み時間のたびに女子生徒達が憂太を目掛けてまっしぐらしてくるようになり、さすがに3日目には、憂太は休み時間になるとすぐ姿をくらますようになった。
「そんなに遠くに行ってないと思うけど…」
授業と授業の間の休み時間なんて、そんなに長くない。
あんまり遠くまで行くと、次の授業に遅れるし。
憂太は真面目だから、授業にはきちんと参加していた。
前の高校より進んでいる授業内容にも、即座に対応して理解していたから、頭も良さげ。
うん、モテ要素が増えた。
そのうえ、放課後のダークなあの姿を見たら、昼間の爽やかな姿とのギャップ萌えで更に人気が出てしまう。絶対。
「…――…――」
あ、憂太の声。
微かに聴こえた声を辿っていくと…
「真希さん、僕ほんと困ってて…」
中央階段を下りた先にある裏玄関横の階段下に、しゃがみこんで電話をしている憂太を見つけた。
「ええ! そんな…少しくらい話を…」
「あ、待って真希さん! ……。切られちゃった……はぁ…」
「憂太」
「おわっ!? Aちゃん!! びっくりしたぁ…」
思わず零れてしまった声に驚く憂太が、気まずそうに立ち上がりスマホをポケットにしまった。
こんなすぐに声をかけるつもりなかったんだけどな…
「もしかして僕を捜してた?」
「うん…誰と話してたの?」
「あー…えっと…」
マキさんって言ってた…年上の彼女なのかな…?
「真希さんは――」
「――時間! 早く戻ろう!」
「え…う、うん」
なぜか憂太の口から決定的な答えを聞くのが急に嫌になって、私は憂太の言葉を遮って踵を返して歩き出した。
憂太は不思議そうにしながらも後ろからついてくる。
「ごめん…Aちゃんにも迷惑かけてるよね…」
私が怒っていると勘違いしたのか、憂太がおずおずとした口調で謝ってきた。
的外れな気遣いは、憂太の特技かもしれない。
ズカズカと上っていた階段の途中で振り返り、私を少し見上げる位置にいる憂太を見つめる。
そんな叱られた仔犬みたいにしょんぼりされると、よしよしおいで…ってしたくなるじゃん。
操られているように、憂太の頭に手を乗せてポンポンと2回弾ませてから撫でた。
「迷惑なんて思ってないよ。憂太はすぐ謝りすぎ」
「ほんと? 何か怒らせるようなことしてない?」
「してない。大丈夫」
「よかったぁ…」
ゆっくりと、柔らかな笑顔ではにかんだ憂太。
“はにかみ王子”め…
この顔、他の誰にも見せたくないなぁ…
…と、思ってしまった私はこのとき既に、憂太に囚われていたのかもしれない――…
*
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2022年3月6日 22時