13 直感と信用〈憂太side〉 ページ13
先生は自分のペースを崩さない人だから、こちらの話を先に聞くという事は絶対にしない。
自分の聞きたいことを先に聞く。
だからこれが先生の通常運転で、それが逆に僕にホーム感と安心感を与えてくれる。
ほう…っと息が漏れた。
初めて且つ久しぶりの普通高校で、思った以上に緊張していたみたいだ。
先生はきっと、そんな僕のこと分かってるんだよね。
「はい、ちょうど今、一体祓ったところです。ただ非術師に憑いててーー」
「ーーそっか。それじゃあ時間かかりそうだね」
「はい」
「いーよ、こっちの事は気にしないで、そっちに集中して」
「はい、分かりました」
「とりあえず、憂太の実力見越してさっき処理班送ったから、非術師と現場はそのままにしておいて」
「はい」
「んじゃ、よろしく〜」
「あ、先生！ あと実はーー」
Aちゃんの事を簡単に説明した。
彼女が現場に居合わせたこと。
僕の術を見せてしまったこと。
「(彼女が)もしかしたら呪いの発生源ではないかと…」
「ふぅん」
「なので、(避難させるより僕の傍に置いて、)絡まっていた数体の低級呪霊を(男子生徒の呪いと)一緒に祓いました」
「なるほどねぇ……」
珍しく少し黙考しているらしい先生の、次の言葉を静かに待った。
「ま、憂太が話しても問題ないって判断したならいーよ♪」
「え、いいんですか？」
軽っ！ いつも以上に軽い！
先生は適当なことばかり言うけれど、本気で適当な訳じゃないって思いたい。
「もちろん。憂太はそういうの、間違えないでしょ？」
「僕の直感はそこまで信用できるものでは…」
「大丈夫、大丈夫〜！ 憂太はもう僕と同じ特級なんだよ。いけるいける〜」
これは絶っ対！ 適当だ…ッ！！
「はぁ…分かりました……それじゃあまた…」
電話を切り、待受画面に戻ったスマホを眺めながらため息を漏らす。
ポジティブに考えれば、先生は僕を信用してくれたってことだ。
それって結構凄い事なんじゃないかな？
それにもし僕の判断が間違っていて、僕やAちゃんに何かあった場合、自分がフォローするという先生の絶対的自信が根底にある。
(…敵わないなぁ…)
不可能ではないと言い聞かせても、やっぱり五条先生の域に達するには圧倒的に経験が足りない。
その為に志願した任務。失敗する訳にはいかない。
「お待たせ。今、先生に許可を貰ったから、Aちゃんには正直に話すね」
不安の色を浮かべて僕を見ているAちゃんを安心させる為に、ゆっくりと微笑んだ。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
