11 放課後の祓除� 厖�太side〉 ページ11
帰りのホームルームが終わり、他のクラスメイトに話しかけられて対応している間に、隣の席のAちゃんが鞄を置いたままいなくなっていた。
慌てて呪力を辿って廊下を急いで歩いているけれど、物理的にも意識的にも、一向にAちゃんを見つけられない。
「うーん…見失った…」
ほんと、僕の呪力レーダーはポンコツだ。
少し距離が離れただけで分からなくなる。
意識の問題？
それともオートマにする方法があるのかな…？
今度、五条先生に聞いてみよう。
そんな事を考えながら、放課後の喧騒からかなり離れた校舎まで来ていた。
ここ数年の生徒の減少で、使われなくなった教室が並ぶ。
その中のひとつ、一番奥の教室に禍々しい空気が漂っている。
無意識に『呪い』の気配を辿っていたらしい。
人の呪力を追うのも、この応用なんだよなぁ。
それには、五条先生が言うように、人それぞれ違う“呪力の特徴”を感知しないといけない。
ーーガラガラガラッ！！
「この教室だね、リカ。もの凄く呪いが吹き溜まってる…」
何の躊躇いもなく教室のドアを開いた直後、女の子が胸に飛び込んできた。
「たすっけてっ！」
「え、Aちゃん！？」
咄嗟にドアを開けていない手で抱き止める。
小さくて柔らかい…
つい一瞬そんなことを考えてしまった。
胸元がはだけているのがチラリと見えて…
疚しい感情を抑え込むためにギュッと一度きつく目をつぶり、
「どうしたの？ 大丈夫？」
問いかけたけれど、Aちゃんは無言で微動だにしない。
けれど小刻みに震えていた。
視線を前方へ移すと、手の中の温もりの向こうに、目当ての呪いが佇んでいた。
目に生気が感じられない。取り憑かれているのが明白だ。
そしておそらく、Aちゃんは理性を失った彼に…
よくあるパターンだ。
呪いは欲望の塊。
理性など持ち合わせていないから歯止めも利かない。
「君は…人間、だよね」
呪いに支配されているとはいえ、女の子を力ずくで思い通りにしようとする事への嫌悪感と憤りが声音に影響し、思った以上に低い声が出て自分でも驚いた。
それよりどうしよう…
非術師に取り憑いているなんて、想定外だった。
「うーん…困ったなぁ…非術師の相手は任務に含まれてないんだけど…」
「先生に確認してる暇はなさそうだし、僕の独断でいいかな。後で謝れば…」
ひとりぼやいていると、腕の中のAちゃんが不思議そうに顔を上げていた。
かなり近い距離に心臓が重たく跳ねたけど。
何とか平静を装って、抱いていた肩をそのままに、後ろの壁際まで誘導した。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
