2 時期外れの転校生 ページ2
「乙骨憂太です。よろしく、お願いします…」
翌日の朝、ホームルームを早々に切り上げた担任教師が意気揚々と紹介した新しい生徒。
転校生と聞いて、見目麗しい女子を期待していた男子の落胆ぶりが酷い。
黒板の前の彼は、そんな教室の雰囲気と刺さる視線に怯えて緊張しているのか、おどおどした態度に定まらない目線。
可哀想に…
それにしても、こんな学期の途中に転校？
訳ありな臭いがプンプンする。
見た感じ、いじめ…とか？
下の名前はまだしも、苗字…変な名前。骨って…
この界隈では見かけたことのない真っ白な珍しい形の制服を着ている。どこの高校だったんだろう？
それに、リュックやバッグの代わりに細長い棒を背負ってる…
そこに勉強道具が入っているとは思えない。
なにより、どこかで見たことがある風貌…
「あ、」
家の近くの公園にいたヤツ！
暗がりだったけれど間違いない。
転校生だったのか…不審者扱いしてゴメン！
「じゃあ…席はAの隣な。Aー！」
「はい…」
名前を呼ばれて反射的に手を上げて返事をする。
「よろしくお願いします。Aさん」
「よろしく…」
緊張しておどおどしていた割に、躊躇いのない足取りで私の隣の席に座った乙骨憂太。
じっと見つめていると…
「転校生って、そんなに珍しいかな？」
不意にこちらを向いた乙骨憂太と視線がかち合って、困ったような微笑みを浮かべられた。
「うん…まぁ…こんな学期の途中とか、やたら不自然なタイミングだし…」
「あぁそっか…そうだよね。確かに…それは考えてなかった…」
「は…？」
「まずったなぁ…僕のせいじゃないけど…一応、先生に報告しておこう」
「え…？」
何やら意味の分からない事を、一人でブツブツと呟いている。
やっぱりこいつ、ヤバい奴なのでは…？
「Aさん、この学校のこと、色々教えてね」
「うん…」
突然、輝く笑顔を向けられて、思わず頷いていた。
だって何か…笑顔が可愛い…そして眩しい…
こういう爽やかな、疚しい下心を感じない男子に遭遇したことないから免疫がないし。
ちょっと“癒し”っていうか“目の保養”っていうか…
いいよね、たまにはそういう存在の男の子がいても。
細長い棒が何かは気になるけど、先生も何も指摘しなかったって事は、校内でそれを持ち歩く事を認められてるってことなんだろう。
「それ、大切なものなの？」
「…え、うん。特別に持ち歩く許可は貰ってるんだ」
「へぇ…そう…」
どんな理由かは謎だけど。
とりあえず、お昼休みに校内を案内して回る約束をした。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2022年3月6日 22時
