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8 芽生えた情愛 ページ8

宿儺さまと(しとね)を共にした。

初心の私には何をどうしたらいいのか分からず、宿儺さまの唇が肌をなぞるたびに漏れてしまいそうになる、あられもない声を、目をつぶり必死で抑えていた。

自分でも触れたことのない場所を撫でられ弄られ、その瞬間はもの凄く痛かったけれど、何故かとても『愛』を感じて…

薄く目を開き見上げた宿儺さまのお顔。

兄に教えられた情報通りではないにしろ、両の目が二つずつ縦に並んで、私を慈しむように見つめていた。


(…あぁ…この方は、とてもお優しい方だわ…)


姿形が人間離れしているだけで、心根は私達と何も変わらないのだと、宿儺さまに愛されながら悟った。


くすぐったい感情に身を委ねてしまえば、他の方とは違うお顔も愛おしく、側にお仕えすればついじっと見つめてしまう。

そのたびに…


「あまり見るな。穴が空く」


などとはぐらかし、そっぽを向く宿儺さま。

その頬が僅かに染まっていることに気がつき、自然と笑みが溢れた。

そんな私に流し目でチラリと視線を寄越した宿儺さまは、四つの(まなこ)を少しずつ見開いて、今度は私がじっくりと見つめられる。


──トクン…


胸が鳴る。

身体の内側で微かに芽生えた、甘やかな感情…

宿儺さまへ向かうこの温かい想いは、一体何かしら…?






「綺麗なお庭…」


宿儺さまに賜ったお部屋から見える景色は、手入れの行き届いた美しい庭園だった。

このお部屋がお屋敷の北側奥に位置していて、それだけでも宿儺さまが私を大切にしてくれていることが分かる。

宿儺さまは正式に、私を『正妻』として迎えてくれたのだ。

貢ぎ物として連れて来られたのだから、下女…良くて(めかけ)と想像していたのだけれど…













「不足はないか」


一日の終わり。

私の部屋を訪れる宿儺さまに、毎度問われる。

花や蝶やと慈しまれて、不満などあるはずもない。


「はい…」


ただひとつ言うとするなら、宿儺さまとの物理的な距離に寂しさを覚えるくらいで…


「ですが…もう少し、お傍に…」


微笑みとともに小さな声を振り絞る。

一瞬、目を見張った宿儺さまは、咳払いで頬の熱を冷まして、ゆっくりと私の傍らに腰を下ろしてくれる。

お顔はそっぽを向いたまま。

けれども、お耳はほんのり赤くて…

私の心はふわりと浮き上がった。


「拒むことは許さん」


観念したのか限界か。

有無を言わせない命令のような言葉の後に、唇に押し当てられた温もりから深い情愛が注ぎ込まれ…


(…愛してる…)


未だ言葉に出来ない想い。

次第に熱を帯び、甘く乱れる口づけを受け止めることで伝えられるのなら──…


*

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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺 , 宿儺   
作品ジャンル:ファンタジー
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時

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