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4 呼び名 ページ4

国の“英雄”である俺への貢ぎ物…

それは、

『女を贈るので、私達を護って下さい』

という意味の、簡単に言うと“生け贄”だ。

独り身の俺にとって“女”とは、欲を満たすための暇潰しでしかない。









屋敷に連れ帰って三日目の朝。

初日こそ部屋の隅で怯え震えていたが、そろそろ落ち着いた頃合いだと、女の部屋を訪ねた。

無遠慮に御簾を開け放つと、女は目の下にクマを作り虚ろな視線を投げてきた。

この二日間、寝ずに夜を過ごしたのだろう。

ろくに眠っていない事が窺える。


「はぁ…面倒だな…」


無意識にため息を漏らし、女に目線を合わせて問う。


「名は何という?」

「……。」

「まだ名乗る気にならんか…」


呼び名を聞きたいだけなのだが…

面倒な思いと苛立ちが、分かりやすく俺の眉根をきつく寄せる。

そのせいか女は、恐怖からかガタガタと目に見えて身体を震わせていて、もはや気の毒としか言いようがない。

再び盛大なため息が漏れる。


「これでは何と呼べばよいか分からんな」


話も出来ないほど怯える女を抱く趣味はないし、そんな女の世話は面倒以外の何ものでもない。


「はぁ…どうにも面倒だ…」









「A、と言うそうです」


数日後。

女の仕事振りを報告に来た裏梅が、一番始めに口にした情報は、女の名前だった。


「…話したのか?」

「はい。さきほどやっと…愛らしいお声を聴けました」

「そうか…口がきけない訳ではないのだな」


あまりにも声を発しないから、読み書きが出来ず言葉を知らない器量無しとして、体良く贄にされたのかと考えたが…

さすがに領主であるこの俺に、そのような女を贈るはずもない。

おそらくあれは、極上の女だ。


「今夜、お側に召されてはいかがでしょう?」


口を利いたと聞いてほっとしたのも束の間。

俺の安堵の言葉に続けて、裏梅が突拍子も無いことを口にした。


「何を、言っている」

「そろそろ頃合いかと…」

「馬鹿を言うな。まだそのような時期ではない」

「それは失礼致しました」


僅かに笑みを湛えながら、裏梅は恭しく頭を垂れた。

まったく…


本来であれば初日から三日間、(しとね)を共にして婚姻を成立させるのが通例…

だが、あのように怯えきっている様子では、無理矢理な行為になってしまう。

こちらが恋い焦がれているならまだしも、俺にそんな情はない。

まぁ…愛らしいとは思うが…


「では、日を改めて…」

「余計な気を回すな。そうなる時は自然とそうなる」

「出過ぎたことを…では、お休みなさいませ」


口の端に笑みを残したまま、裏梅は静かに退室した。

有能はときに節介が過ぎるな…


*

5 『愛』を知った日→←3 手にした女



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺 , 宿儺   
作品ジャンル:ファンタジー
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時

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