※ 27 僅かな希望 ページ27
「そこに座れ」
両足と両腕を後ろ手に縛られ、私兵に抱えられて無理矢理お兄さまの目の前に座らせられた。
こうなったらもう私の運命は決まったも同然。
私に残された希望は、最後まで許しを乞い、この場を生き延びることだ。
「お兄さま！ お聞きください！」
「はあぁぁ…まぁいいだろう。お前の生が終わるまで後少しだしなぁ」
胡座をかいて頬杖をつき、退屈そうに盛大なため息を溢す兄に、全身全霊で懇願する。
「お許しくださいませ…！ 俗世を捨て、この山からは決して下りませんので！…どうか…ッ」
「許すなど無理な話…分かっているのだろう？」
「分かっております！ それでも…ッ」
「まったく…あのような異形の化け物に惚れ込むとは…」
「宿儺さまは“化け物”などではありません！ あの御方は──」
──ヒュッヒュッ…
「ああぁぁ…っ！」
胸とお腹に一筋ずつ、熱く鋭い痛みが走る。
お兄さま自ら、鋭利な刃を振るったのだ。
着物が裂け、深い肉の裂け目から滑らかに赤が滴った。
「お前は昔も今も忌み子に変わりない。汚名返上する機会を与えてやったというのに…」
「…うぅ…ッ」
「慈悲で話を聞いていれば、阿呆のような戯れ言ばかり。聞くに耐えん」
──ザクッ…！！
「ひぁッ！？」
左太腿にお兄さまの持つ刀が突き刺さった。
「お前は一族の使命を反故にし、俺達を…“人間”を裏切った──」
「ぅあ"ぁッ」
話を続けながら前後左右にぐりぐりと肉を抉られ、激痛で気を失いそうになる。
だめ…宿儺さまがお帰りになるまで、意識を保たなければ…
「その報いは、死をもって償え」
立ち上がった兄から、決定的な罰が下る。
頭を足蹴にされ、板の間に横たわった私の周りには、兄の私兵の後ろからぞろぞろと現れた民達の姿。
全員がそれぞれ持ち寄った斧、鉈、鍬、鎌、刃こぼれした刀を手に私を見下ろしている。
「…お願い…します…」
「……。」
つまらなそうに欠伸をして背を向けた兄に、めげずに言葉を紡ぐ。
ここで命が果てるのなら、最後に宿儺さまにお逢いしたい…
せめて、お別れの言葉を…
「あぁ…待て。どうやら主役が到着したようだ」
「…ぇ…」
近づく足音、呪力、匂い。
宿儺さま…
止めどなく溢れる赤の痛みで、もはや声を発することも儘ならない。
それでも…最後にお伝えしなければ…ッ
「A！」
「宿儺…さま…」
あぁ…愛しい貴方…
先に逝くことをお許しくださいませ…
「…何故…こんな…」
宿儺さま…
ここは、兄の領域内。
術式の必中効果を優先してあります…
「…来ては…なりません…」
何とか絞り出した声は、吐息のようだった。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 221人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます！このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (
レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ！！すききききききいいいい！ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆずあ | 作成日時：2023年3月18日 11時
