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22 遠出 ページ22

約束通り、Aを連れて日帰りの遠出をする。

Aの心身の負担を考えて、行き先は牛車(ぎっしゃ)で移動できる場所に決め、馬で山を下り、麓に待たせていた牛車に乗った。

牛車の御簾をずらし、伸び上がって外を覗き見るAは、そわそわと幼子のようだ。


「…A、少し落ち着け」

「だって宿儺さま…わたくし、初めて目にするものばかりで…」


貴婦人としての嗜みに反すると暗に伝えたが、そうか…

Aは俺の屋敷に来るまで、座敷牢という限られた空間で、想像もつかない窮屈な日々を過ごしていたのだったな…

Aが閉じ込められていた事には、過去の境遇など意に介さない俺でも、さすがに憐れむ心はある。

縋るように見つめられ、それ以上咎めることは止めにした。

はぁ…俺は、自分でも驚くほどAに溺れきっている。

もし子が生まれても、俺がAを一番に優先し、際限なく甘やかすのは変わらないだろう。


「宿儺さま? どうされました?」


不意に黙り込んだ俺を不思議に思ったAは、無防備にも俺に寄り添う。

物思いを秘める息を漏らしながら、Aの肩を抱き寄せた。

心配そうに俺を覗き込むAの唇を無言でそっと掬い、ゆったりと触れるだけの口づけをした。

俺がAに甘えているような口づけだけで、Aの頬は桜色に染まり、更に愛らしくなる。

これでは今夜、寝かせてやれんな。













「これが“海”なのですね!」

「そうだ。広くて美しいだろう」


陽の光が反射した水面を背景にしたAは、舞い降りた天女のように美しく煌めいていた。

このままでは海の神に見初められそうで、慌ててその手を引いて肩を抱き寄せる。


「はい! キラキラと輝いていて、海の世界に吸い込まれそうです」

「それは困るな。では、どこにも行けないように、こうしていよう」

「宿儺さま…」


俺に身を寄せてはしゃぐAに“海”を見せたまま、誰にも奪われないよう後ろから抱きしめた。

何をしても何を言っても愛らしいな、お前は。

この感情は紛れもなく『愛しい』というものなのだろう。

それを伝える言葉も頭では理解しているが…

この俺には似合わない気がして、肌を重ねても奥深くまで繋がっても、こうして腕の中に閉じ込めても、未だに口にした事はない。

まぁ、それはその内…


「宿儺さま…わたくし、今とても幸せです…」


抱きしめている俺の腕にそっと手を添えて、Aが柔らかな声音で呟き、俺は幸福に満たされる。


「…お前…俺を殺しにかかってるのか?」

「えっ!? そのような…ッ」


思惑通り焦って振り向いたAの唇を、口角を上げて掠め取った。


*

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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺 , 宿儺   
作品ジャンル:ファンタジー
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時

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