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21 深まる愛 ページ21

「おかえりなさいませ」

「出迎えご苦労。Aは息災か?」

「もちろんでございます」

「そうか…」

「宿儺様と夕餉(ゆうげ)をご一緒するのだと、落ち着かないご様子でした」


弥生め…余計なことを…

そう思うのとは裏腹に、俺の帰りを今か今かと待ちわびているAを想像してしまい、つい口元が緩む。


「すぐに奥方様のお部屋に御膳をお持ちします」

「あぁ……夕餉の後、今日は下がってよい」

「かしこまりました」


心なしか進める歩も速くなる。

早く、逢いたい。


「A! 帰ったぞ!」

「…宿儺さま…おかえりなさいませ…」


深々と頭を下げたAに遠慮なく近づき、その身体を四の腕で抱き寄せた。

嗚呼…この香りだ。

この数日、俺が求めていたのは…

しばしの間、Aを抱きしめる。

腕の中にすっぽりと収まり、俺の胸に頬を寄せ身を預けてくれていることが、何とも心地良い。


「お疲れでしょう? 今日は早く寝ましょうね」

「……それは、誘っているのか…?」

「…ぇ…ち、違います! わたくしは純粋に──っ!?」


Aが反論するために顔を上げた瞬間を狙って、柔らかな唇を掬った。

開いていた唇を捉えた訳だから、口づけが深くなるまではほんの僅か。

俺の胸の辺りの着物をギュッと握るAの手を、包み込むように優しく覆った。

妖しく艶やかな熱い吐息が口の端しから零れていく。

俺はいつもこれに絆されて…理性が曖昧になるのだ。

だが、そろそろ…


「宿儺様。御膳をお持ち致しました」


思った通り、口づけを交わす俺達の背後で、裏梅が音もなく手をつき頭を下げていた。















珍しく何の用事もない休日と呼べる日。

庭師に手解きを受けた弥生と作り上げたという花畑を見に、Aの部屋を訪ねた。


「宿儺さま、いかがですか?」

「あぁ、美しいな」


そう言うと、Aはふわりと笑う。

愛らしい笑顔は、花を敷き詰めたこの庭園よりも美しい。


「でもきっと、宿儺さまの薔薇の庭園には及びませんわ」

「そうだな…負ける気はしない」

「まぁ…大層な自信ですこと。来年が楽しみです」


出逢った頃に比べれば、見違えるほど表情が柔らかく豊かになった。

日々、Aへの想いが深まり、愛しくて堪らない。

俺がこのような心を持つようになるとは…


「A。近々、遠出するか?」

「え!? よろしいのですか?」

「あぁ、常に俺の隣に居れば問題ない」

「…もちろん…お側は離れません…」


頬を染めながら俯く様子は、俺の情を煽っているとしか思えない。

すぐに腕の中に囲い、そのまま閉じ込めて離さなかった事は言うまでもないだろう。


*

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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺 , 宿儺   
作品ジャンル:ファンタジー
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時

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