3 手にした女 ページ3
扇の陰から覗く、ほどよく潤い澄んだ瞳が大きく見開かれ何度か瞬く。
だが、感情は読み取れん。つくづく面倒だ…
「裏梅をここへ」
「はい。ただいまお呼びします」
控えていた弥生に言いつけ、俺もその場に胡座をかく。
膝で頬杖をつき、無言で女を眺めた。
小鳥のさえずり
木々のさざめき
ゆっくりと橙色に染まっていく空
しばらく静かな時間が流れる。
そこへ…
「宿儺様、お呼びでしょうか」
声に振り返れば、音もなく裏梅が手をつき頭を下げていた。
こいつは気配を消すのが上手いな。
「裏梅、この女をお前に預ける」
「はい…かしこまりました」
俺には手に余る女を、一番信頼している側近の裏梅に任せることにした。
裏梅には食事の世話を全て任せている。
何もしないで過ごすよりは、何かをして過ごす方が良いだろうと思った故だが。
正直、高貴な家柄の女に下賤の者の仕事が務まるかどうか…
「ここには都のように
「……。」
相変わらず返事はない。
だが、扇から僅かに覗く瞳に光が宿った気がした。
「俺は出かける。お前は好きに過ごせ」
じっと見られている感覚を背中に感じながら、女の部屋を出る。
はぁ…
図らずも、妻を
「裏梅、必要なものを全て買い揃えろ」
「承知致しました」
財布を裏梅に投げ預け、女が生活するために必要なものを買いに行かせた。
俺には何が必要なのかさっぱりだから、裏梅に任せるのが一番だ。
「弥生、女の世話を任せる。毎日報告を怠るな」
「かしこまりました」
世話係は長く仕えている弥生に任せた。
日々の報告をさせれば、女の様子を把握できる。
あのように怯えられてしまえば、人並みの夫婦として過ごすには時間がかかりそうだ。
しかし、ゆくゆくはこの屋敷の女主人として立つことになる。
「まぁ…それには年月が必要だろうな…」
少なくとも
それでも貴族の娘が嫁ぐ時期を三年は逃している。
何か問題でもあるのだろうか…？
口がきけない、器量無し…
ならば、
何にしても厄介だ。
大きく息をつき、屋敷からそう遠くない見晴らしのいい高台へと辿り着く。
考え事をする時は、決まってここへ足を運んだ。
備え付けられたかのように鎮座する平らな大岩に腰を下ろし片膝を立て、眼下に広がる自身に与えられた領土を見渡し…
思いがけず手にした女をどうしたものか…考えを巡らせた。
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます！このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (
レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ！！すききききききいいいい！ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2023年3月18日 11時
