20 想いに耽る ページ20
『五日後だ』
兄の言うそれは“宿儺さまを討つ日”ではなく、来る決行の日のために宿儺さまの屋敷図を作る目的の侵入で、私を
私が拐かされかけた事と、金品の類も大半を盗まれていた事で、宿儺さまは盗賊の襲撃だと信じていた。
とても心苦しいけれど、でも…
真実を言ってしまえば、この幸せな毎日に終わりが来ると…
それが怖くて恐ろしくて、私はどうしても事実を告げられなかった。
そうして心ここにあらずで、ひたすら憂鬱な物思いに耽る日々を過ごしていたある日。
「奥方様。お庭に花壇を作りませんか?」
このところ塞ぎがちだった私を元気付けようと、弥生があれこれと世話を焼いてくれていた。
この誘いもそのひとつ。
「まず弥生が庭師に手解きしていただきますから」
「花壇なんて…私にも出来るかしら…?」
お花を土に植えるなんて初めて…
新しいことに興味津々の私の心は、幼子のようにとても弾んでいた。
「綺麗な花壇を作って宿儺様をあっと驚かせましょう」
「…ええ…そう、ね。どのようなお顔を見せてくださるのか楽しみだわ」
宿儺さまに褒めていただけるかしら…?
*
「すっかり遅くなったな…」
三日の日程の祓除任務が少し長引き、陽が落ちゆく中、
早くAに逢いたい。
あれの華やぐ笑顔を見れば、長期の任務疲れなど瞬時に跡形もなく吹き飛ぶというものだ。
そしてこの腕の中に閉じ込めて、逃がすことなく空が白むまで甘やかしたい…
……。
…いや待て…
これでは、俺がAに甘えているだけではないか……
「…クッ…ククッ……この俺が…これほどまで女一人にのめり込むとは……鬼神の名が泣くな」
まぁ…
とにかく、今は一刻も早く屋敷に…Aの傍に戻りたいのだ。
「もう少し急げるか?」
「へぇ! 日没前に着けるよう急ぎますので」
「あぁ、頼む」
牛車の引き手を二人にして良かった。
その上この牛車は俺用に特別に作らせたもので、通常四人乗りのところ、速さを優先し二人乗りの小型の牛車。
引き手の言うとおり、俺の予想よりも速く走り始め、安堵して腕を組み目をつぶった。
まぶたの裏の暗がりで、Aの微笑みが暖かな光とともに輝いている。
嗚呼…待ち遠しいな…
お前の芳しい色香に包まれて、桜色に彩られた唇を堪能し…
滑らかな白肌に唇を這わせ、その後は…
柔らかい膨らみの先端…
いつまでも吸い付いて口内で転がしていたい
まるで小さな果実のような…──
*
222人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時