18 奇襲 ページ18
その日の真夜中。
寝静まった屋敷内に響く、ガタガタバタバタと騒々しい音で目が覚めた。
何度か聞き覚えのある…これは賊の侵入!?
即座に結論を出すと同時にガバッと起き上がる。
隣で眠るAに気を置きつつ、御簾を出て部屋の戸を開け放ち声を張り上げた。
「裏梅! 裏梅はいるか!」
「宿儺様、私はここに!」
「一体何の騒ぎだ!? 賊か!?」
「はい! 賊の奇襲です! 早くお逃げください!」
「逃げる…誰に言っている。俺はAを連れて応戦する! お前も応戦しつつ使用人達を安全な場所へ!」
「御意!」
金品奪取が目的の真夜中の奇襲。
山頂とはいえ、大きな屋敷だから狙われる事は多々ある。
だが、賊のように組織で動く輩は女をも売り物にする。
俺に貢がれた女の噂を聞きつけ、Aを
「きゃあっ」
「クソッ…」
振り返れば、暗闇の先に腰を抱かれて今にも連れ去られそうになっているAがいた。
「す…くな…さま…」
「貴様ら…ッ」
助けを求める頼りないAの涙声に、俺の理性はいとも簡単にプツリと切れた。
──ヒュッ…
「ぎゃっ」
──ビュッ…
「ぐぇっ」
片手を左右順に振り、Aの身体に触れていた賊を呪術で攻撃する。
人間相手に術を行使したのは、これが初めてだった。
「A、平気か?」
解放され、その場に崩れ落ちたAを片手で抱き止め、安心させるように背を撫でたその時。
──ザシュッ!
「…クッ…」
「宿儺さま!」
Aの無事を確認して安堵した僅かな油断の隙。
生き残りの賊が振り上げた刃を受け止める剣が間に合わず、Aを庇いながら腕で防御した。
肉の裂ける音と痛み。
Aの悲鳴。
容赦なく滴り落ちる赤。
振り抜いた自身の刃の残像。
切り取った無数の絵のように脳裏に焼き付いた──…
「おい、泣くのはもうよせ」
「申し訳ありません…申し訳ありません…」
「何故謝る。お前は被害者だろう」
「…っ…違うのです…申し訳ありません…ッ」
「はぁ…もうよい。何も言うな。大した傷ではないし、術で治せる」
Aを庇うために賊の刃を受けた腕は、肉が裂け骨が見えていたが、刃を受けた瞬間から反転術式を行使していたから、既に治りかけだった。
だが、Aは大粒の涙を止めどなく流し、謝罪の言葉を繰り返した。
どうしたらよいか…と考えあぐね、結局、
「宿儺…さま…?」
「おとなしくしていろ。悪いようにはせん」
小さな身体をそっと抱きしめ、背を撫でた。
するとAは僅かに、それでも確実に。
俺に身を寄せ、すべてを委ねたのだ。
*
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時