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16 術式と使命 ページ16

私が日々過ごしているお屋敷北のお部屋の庭園には、毎日数匹の呪霊が訪れる。

お兄様の呪霊声明(しょうみょう)操術で操られた、私を監視する呪霊達。

それを毎日、縁側に出て自分の術式で呪力を奪い、消滅させていた。

呪霊声明操術は、呪霊を操り声を通すことは出来るけれど、もし祓われた場合、相手の術師の呪力残穢(ざんえ)や術式を感知することは出来ないから、私が祓っていることはお兄様には伝わらない。

これで暫くは、お兄様の目を誤魔化せる。

宿儺さまに祓われているのだと、思っていただける。


そんな、ある日──…




蠅頭(ようとう)ほどに呪力を失った一匹の呪霊が、何が心地良かったのか酷く懐いてしまい、私の側を離れなかった。

どうしよう…もうすぐ宿儺さまがお戻りになられる。

何とか消滅させようと呪力を練ったけれど…

今日訪れた呪霊達はどれも呪力が強化されていて、祓う私の呪力消費も激しく、消し去るのにも時間がかかってしまった。


「A、いるか?」


その時、宿儺さまの声が聴こえた。

ダメね、もう時間がない。隠し通せないわ。

今日この場で、私に術式があることを明かしてしまいましょう。

驚くとは思うけれど、本来の目的…私の使命には気づかれないはず。

死ぬまで…いえ、死んだ後も口に出して告げるつもりはない使命。

このお屋敷に来た数日後から、胸に秘めたまま生涯を終えることを決めていた。

いくら勘の良い宿儺さまでも、それだけは絶対に悟らせないよう細心の注意をはらう。


「またそんな端近(はしぢか)に出ていたのか…」

「宿儺さま…申し訳ありません」


思惑は秘め隠し、ゆっくりと笑みを深めた。

それだけで宿儺さまが少し照れて、視線を逸らしてしまうことを知っていたから。


「…お前…術師、だったのか…?」


案の定、私の膝の上の蠅頭に視線を戻した宿儺さまは、珍しく目を見張り驚いていた。

手のひらで触れた相手の負の感情を緩和して、相手の攻撃力と戦意を奪う…

名を与えられなかった私の術式。

四方八方に意識を置く隙の無い宿儺さまの刺客として適任だと、婚姻という形で宿儺さまの懐に送り込まれた。

非力な女であれば警戒心を解くという、お父様とお兄様の判断で、確かに思惑通り警戒心を解くことには成功。

けれど、想定外のことが起きた。

私が宿儺さまに想いを寄せ、宿儺さまも私を慈しみ愛情を与えてくださったこと。

私達が心を通わせたことが、計画の根底を崩してしまった。


夜、お(しとね)を共にし、宿儺さまの呪力を奪う…




私がこの力を本来の意味で

愛する人に向けることはない…


永遠に──…


*

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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺 , 宿儺   
作品ジャンル:ファンタジー
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時

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