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15 大切な存在 ページ15

「次の月の障りがなければ、ご懐妊と見て間違いないでしょう」

「…ありがとうございます…」


医師(くすし)さまが浮かべたにこやかな笑顔を見て、胸に手を当てほっと息をつく。

私のお腹にややが…

この私が、宿儺さまの赤さまを産むなんて…


「おめでとうございます! 奥方様!」

「弥生、おめでとうなんて…まだ早いわ」


そう返しつつも私の頬は、弥生と鏡写しのように綻んでいる。

とにかく後ひと月、私に月のものが来るか来ないか、様子を見ることになった。

妊娠の可能性があるというだけで、まだ確定ではないけれど…

まさか、宿儺さまのお子を授かるとは思いもしなかった。

もし本当に、お腹(ここ)に来てくれているのなら…

万が一にも死産など、しないように。

この子は大切に…

何があっても、私の命に代えても護らなければ…

宿儺さまのお子…もし男児なら、お世継ぎとなる大事な命なのだから。

もしかしたら、宿儺さまと同じ術式を持って生まれてくるかもしれないし。


「腹帯の準備もしないといけませんね。忙しくなりますわ」

「そうね。大切に育てなければね…」

「奥方様のお世話は弥生が致しますから、どうぞご安心くださいませ」

「ええ、ありがとう。手間をかけるけれどよろしくね、弥生」

「お任せください! …あぁ本当に…私が生きている間に宿儺様のお子にお目にかかれるとは思いませんでしたわ」


目尻を潤ませている弥生の言葉に、ひとつ小さな疑問が浮かび上がった。

宿儺さまは…

私以外に大切にしている女人(ひと)

他に恋人はいらっしゃらない…?


「弥生…宿儺さまは…」


どうしてかしら…胸がとてもザワザワする…

ただ事実確認をするだけよ。大丈夫。


「わたくし以外に、想い人はいないの…かしら? 他にお子は…?」


喉の苦しさを我慢して、やっとのことで絞り出した声は、小刻みに震えていた。

自分が発した言葉に、何故か『嫌だ』という拒否反応が胸の内に渦巻いている。

もし、他にも大切にされている方がいて、その方にも愛らしい赤さまがお産まれになっていたなら…

宿儺さまが私以外の女人を、あの逞しい腕に抱いて慈しみ酔わせたことを想像したら、(うらや)みと憎しみが混ざり合ったような感情に支配された。

これが…噂に聞く『嫉妬』というものなのかしら…?


「それは……さすがに殿方としての振る舞いはおありだったと思いますが…このお屋敷に女人をお連れになったことは一度もありません」

「宿儺様が大切にお想いになられた女人は、奥方様が初めてかと存じます」


微笑みと共に欲しかった答えを貰えて、私の心は舞い上がった。


*

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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺 , 宿儺   
作品ジャンル:ファンタジー
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時

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