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14 唯一無二 ページ14

「この香を、俺に…?」

「はい…宿儺さまを想いながら…合わせました…」


視線を落として頬を染めながらのAの返答で、俺の視界は一瞬クラリと揺れた。

ここまで心を揺さぶられたのは初めてだ。

俺を想い、俺のために…などと…

愛しい想いが体内を埋め尽くす。


「いつも素敵な贈り物をいただいてばかりなので、そのお礼、と言いますか…」

「俺が好きで勝手にしていることだ、気にするな。だが…」


嬉しい愛しいという感情が胸を高鳴らせ、自然とAに手を伸ばし、4つの腕の中に閉じ込めていた。


「お前から贈られるものが、これほど嬉しいとは…」

「そう仰っていただけて、安心致しました」


安堵の息を吐いたAは、俺の胸にしがみつき頬を擦り寄せた。

──ドクンッ…

心の臓が重たく弾む。


「あぁ…困ったな…今日はもう離してやれないようだ」

「わたくしも…離れたく、ないです」


Aの言葉が引き金となり、俺の理性は深い情欲に沈められた。


「…んぅ…」


無遠慮にAの唇を掬うと、甘い吐息が漏れる。

それがまた、俺の衝動を激しく煽るのだから困ったものだ。

こんなにも愛らしく、こんなにも手離せない大切な存在には、生涯もう二度と出逢えはしないだろう。


(…唯一無二…)


解っている。

大切な存在をひとつに決めてしまうことの恐ろしさは、想像に難くない。

もし万が一にもAを(うしな)った場合、正気を保てず、俺のすべては壊れるだろう。











──運命を(たが)える。


私の使命は一族の使命。

私が使命を放棄した場合、それは“一族の裏切り”となり、この身は滅ぼされる。

けれど、宿儺さまを護れるなら、私はそれでも良いと思った。

宿儺さまに出逢い、宿儺さまのおかげで、充分すぎるほど今生での幸せを享受した。

溢れるほどの『愛』を注がれた。

牢で一生を過ごすはずだった私が、人並みの女の幸せを掴むことが出来たのだ。

思い残すことは…ない…


──トクン…


そう決意した矢先、お腹の奥に何か気配を感じた。

両手で下腹部を優しく覆う。

そういえば、月のものがきていない…

…まさか…


「弥生…弥生はいますか?」

「はい、奥方様」

「弥生…医師(くすし)を…」

「お体の具合がよろしくないのですか!?」

「あ…いえ、そうではなく…」


お腹に両手を当てている私を数秒見つめた弥生は、すぐに合点がいったようで、


「あら…まぁ…」

「あまり騒がないで。勘違いかもしれないから」

「ええ、もちろんですとも! すぐに医師をお呼びします」


頭を下げた弥生は弾んだ声に満面の笑み、軽い足取りで退室した。


*

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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺 , 宿儺   
作品ジャンル:ファンタジー
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時

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