13 贈り物 ページ13
Aの笑顔が見たい俺は、毎日あの手この手を駆使していた。
町からの帰り道、Aの雰囲気そのものの花樹を見つけ、手折ってきた花咲く小枝を手渡した。
「宿儺さま。これをどちらで？」
「少し寄り道をした。やはり似合うな」
鏡の前で髪に差してやれば、Aはふわりと笑う。
まったく…
愛らしいにもほどがある。
＊
「これは…？」
「庭で咲いていた薔薇を全て束にした。いらないか？」
「いいえ。とても嬉しいです。綺麗…」
Aはそう言って、手に持つ花束にも負けない華やかで可憐な笑顔を浮かべた。
Aの笑顔は俺にとって、何よりも心の栄養になる。
いくらでも喜ぶことを与えてやりたくなる。
「いつか咲き誇る薔薇のお庭を見せてくださいませ」
「では
「約束ですよ」
薔薇の花束にも負けない華やかな笑顔が、今日も俺の心を癒していく。
＊
小鳥の世話に始まった宿儺さまからの贈り物は、お出かけになった日には必ずひとつずつ増えていった。
小枝の花の髪飾りや、薔薇の花束。
絢爛な櫛、美しい装飾の鏡、華やかな扇、珍しいお菓子。
このように慈しまれるのは初めてで、戸惑ってしまうほど…
いつもどうお返しして良いのか分からず、渾身の微笑みを浮かべるだけになっている。
私からも宿儺さまへ、何か贈り物が出来ないかしら…？
「香を合わせてはいかがでしょう」
裏梅さまに相談をしたら、少し考えた後に提案された宿儺さまの香合わせ。
「宿儺さまのお香を私が…？」
「はい。きっとお喜びになりますよ」
楽しそうに告げてくる裏梅さまに絆されて、侍従の弥生に必要な道具と調合する香の種類を伝え、町で買ってきて貰った。
上手く出来るか分からないけれど、香合わせの基本は習っていたから、きっと大丈夫。
お着物にたきしめれば、夜更けにお帰りになった時、暗闇でもすぐに宿儺さまだと気づけるし、素敵な贈り物…
明日は遠出の任務だとお聞きしているから、宿儺さまがお帰りになるまでに完成させられる。
『香か…随分と優雅だな』
「お兄さま…これは…ッ」
『良い。その生活もあと数日だ』
「…どうして…？」
嫌な予感に背筋が冷えた。
けれど、お兄さまは容赦なく言い放つ。
『日が決定した』
「！？」
『五日後だ』
決行日を告げられ、血の気が引く思いがした。
このところ、宿儺さまからの愛を一身に受け、穏やかで幸せな日々を過ごしていたから、すっかり頭から抜け落ちていた。
与えられた使命には抗えない。
運命に逆らい違える事が、私には裏切りと重罪になるのだ。
*
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます！このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (
レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ！！すききききききいいいい！ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2023年3月18日 11時
