11 極上の想い ページ11
女を愛らしいと思ったのは初めてだった。
今まで俺に言い寄る女は、打算と欲にまみれた
卑しい女相手に庇護欲など、砂の粒ほどにも湧かないのは当然。
この腕に抱くのも、俺の欲を放出するためだけで、そういう機能を持ったただの道具に過ぎなかった。
そんな俺が、Aを前にすれば、華奢な身体に僅かにも傷が付かぬよう、泡を掴むようにそっと触れる。
鼻をくすぐるAの甘い香りに当てられて、脳が欲に蕩けていくのが自分でも分かった。
この女を…Aを手放したくない。手離さない。
俺の傍から離れるなと、胸の内で
もはや俺は、A無しでは──
「宿儺さま…ぁ…」
「声を我慢するな」
「…でも…恥ずかしくて…」
「それが良いのだ」
「…っ」
何度も抱いているというのに、未だ恥じらうAが愛おしすぎて、口の端が歪み、何故か苛め責める言葉が口を付いて出る。
少し強引に組敷けば、羞恥に頬を染め、涙目で意味なく僅かに抗う姿は本当に愛らしい。
沸々と加虐心が湧き上がる。
まさか鬼神と呼ばれ恐れられている俺が、これほどまでに女に溺れ、夢中になるとはな…
「宿儺さま」
「どうした。どこか痛むか…?」
情事の後、俺を呼ぶ愛らしい声に、反射的に労りの言葉が、いまだかつて聴いたことのない優しい声音で放たれる。
自分の声も心も甘く蕩けていて、未知の生物のようだ。
「いえ…あの……」
「望みがあるなら言え。すべて叶えてやる」
「まぁ…大層な自信ですこと」
「当たり前だ。俺はお前の為なら何でも出来る」
本心だった。
Aの為なら、無理難題でもどうにかしてやりたい。
Aの笑顔が見られるなら、俗に言う『火の中、水の中』だ。
理由は分からないが、Aは10年ほど実家の牢で生活していたのだと、裏梅から聞いている。
酷く理不尽な不自由を強いられ、屈辱を受けたはずなのに、Aは実家について恨み言をひとつも
それどころか、いつも柔らかくふわりと笑うのだ。
いじらしいにも程がある。
人に恐れられるばかりの異形の俺をも受け入れ、癒してくれる天女のごとき極上の女。
「宿儺さま…ひとつお願いがございます」
「なんだ」
そんな女の望みなら、何を犠牲にしてでも…
「生涯、わたくしを…お傍に…置いてくださいませ…」
予想外の願いに、思考も身体も固まった。
俺の胸に顔を埋め、小刻みに震える身体と揺れる涙声。
小さく華奢な身体を壊してしまわぬよう、そっと抱きしめ口づける事で、同じ想いであることを伝えた。
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時