2 貢ぎ物 ページ2
「大儀であった。宿儺の名を持つ者よ。褒美をつかわす」
「身に余るお言葉、恐悦至極にございます」
国司に謁見し、労いを承った。
通された部屋には、大金と高級な調度品や装飾品、珍しい菓子などがところ狭しと並べられ、国司の家来衆が表に準備した荷馬車に運び入れている。
その中に、やけに着飾った“人間の女”が居た。
「これも褒美…なのか?」
「ええ、こちらの
「はぁ…分かった」
これは、褒美ではなく“貢ぎ物”だろう。
断るのも面倒で、特に抵抗しない女をとりあえず屋敷に連れ帰った。
「着いたぞ。俺の屋敷だ」
流行りの扇で顔を隠す女を抱き上げ、屋敷の中に入る。
必要最低限の使用人しか置いていない為、屋敷内はひっそりと静まり返っていた。
遠くからパタパタと急ぐ足音が聴こえ、
「宿儺様! お早いお帰りで…お出迎えもせず申し訳ありません!」
「よい、気にするな。少し予定が早まってな」
そう言うと、使用人の
「そのお方は…?」
「貢ぎ物だ。陽当たりの良い部屋を準備しろ」
「かしこまりました」
一瞬驚きに目を見張った弥生だが、俺の命に直ぐ様踵を返した。
とりあえず、部屋の準備が整うまで自室に連れて来て座らせたが、屋敷に着いて更に震え出した女は、未だ扇で顔を隠したままだ。
「お前、名は?」
「……。」
「俺のところに来たのが気に入らないか…」
それなりに高貴な身分の女だ。気位は高いと見える。
何故、貢ぎ物とされたのか甚だ疑問だ。
まぁ…どうでもよいか…
小刻みに震える女を暫くボーッと見つめる。
唯一見える白い指先から、華奢で儚げな様子が窺えた。
まだ少女のような…
「宿儺様。お部屋の準備が整いました」
「案内しろ」
再び女を抱き上げて、準備させた部屋の中央へと下ろす。
少しだけ部屋を見回した女は、スッ…スッ…と、衣ずれの音を響かせて部屋の隅へと腰を下ろした。
「ここが今日からお前の部屋だ。要望があれば、侍従の弥生に言え」
「……。」
相変わらずの無言。
女達の止まらないお喋りにはうんざりだが、逆に喋らない女は初めてで、俺もどう接して良いのか分からない。
「まだ名を名乗る気にならないか?」
「……。」
「はぁ…とにかくだ。お前はここに来た時点で俺の妻となった。…本当にそれで良いのか?」
俺の傍を望まぬのなら…
今ならまだ家に帰してやれる。
そう考えて聞けば、女は初めて扇を少し下ろして二つの瞳を覗かせた。
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます!このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ!!すききききききいいいい!ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆずあ | 作成日時:2023年3月18日 11時