1 英雄 ページ1
「宿儺様が鬼退治からお帰りになったぞー！」
「宿儺さまー！」
「お帰りなさい、宿儺さまー！」
「鬼退治、成功おめでとうございます！」
「おめでとうございます！」
進む道の端を埋め尽くす民衆の中心を馬で闊歩する。
口々に浴びせられる称賛と感謝の言葉が四方八方から振り注いだ。
民衆が言う『鬼』とは、本来は『呪霊』と呼ばれる呪いだ。
だが、一般人である非術師に『呪霊』『呪い』は、呪術界としては秘匿とし、一般社会には浸透していない。
呪いは人間の負の感情から生まれる。
出来得る限り、民衆に負の感情を抱かせないこと。
それが俺達、呪術師の最低限の
「今宵は宴だ！ 存分に楽しめ！」
そんな訳で。
この村に隣接する山頂付近の廃寺に、村人達の恐怖から生まれた強力な呪霊がいた。
それを祓除して山を下りたところ、この歓迎だ。
この地を治める国司からも
「宿儺様。宴の準備が整いました」
「そうか。村民には充分に楽しんでもらえ」
「宿儺様は…？」
「俺は少し外す」
裏梅を宴の場に残し、俺は村近くの河辺へと足を運んだ。
賑やかな喧騒から離れ、独り息つく時間が欲しかった。
河のほとりに残された流木に腰を下ろし、持ってきた酒を徳利から直接口に流し込む。
「はぁ…美味いな…」
星空を仰ぎ、目をつぶる。
今日の呪霊は、村人達の長年の恐怖が呪いを増幅させていて、それなりに厄介だった。
正直、一度祓ったからといって、その場に二度と呪霊が生まれないという保証はない。
辛酸、後悔、恥辱、憎悪、怨恨、恐怖…
人間の負の感情には底がない。
いつでもどこでも呪いは生まれる。
この世の最上と思える美しい“愛”さえも、強ければ強いほど歪な呪いに変わるのだ。
「宿儺様。村人達が捜しております。お戻りを」
「あぁ、分かった」
まったく…俺など居ない方が楽しめるだろうに。
そう思いながらも、頼られ必要とされている実感に、心は高揚していた。
「おっ！ 英雄のお出ましだ！」
「宿儺様！ 英雄に相応しい極上の酒がありますよ！」
「そう持ち上げるな。大事ではない」
「またそんなご謙遜を。私達にとって貴方様は英雄です！」
「そうだそうだ！」
人間は
自分に益があれば持ち上げ褒め称え、害があれば、どんな事情があっても情け容赦なく、多勢で総攻撃を仕掛けてくる。
大した手のひら返しだ。
そういう『人間の
俺は充分、理解していたはずだった──…
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ゆずあ(プロフ) - ねかあさん» ご愛読ありがとうございます！このようなマイナーな作品を気に入っていただけたようで嬉しいです(*>∀<*)♪このお話の恋の行方は悲しいものと決まっていますが、最後まで見届けていただけると幸いです。 (11月2日 7時) (
レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - うわわわわああああ！！すききききききいいいい！ありがとうございます。こんなに良い作品を (10月31日 22時) (レス) @page15 id: 705b80bf73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2023年3月18日 11時
