58 秘事 〜過去編��+α〜〈家入side〉 ページ9
「ところで、僕のお願い聞いてくれたよね？」
「もちろん。Aの為だからな」
「ありがとう、硝子」
「……キモ……」
「いや何でだよ！？ こんなイケメンつかまえて、そんな事言うの硝子だけだよ？」
抗議の言葉を叫ぶ五条を尻目に解剖室へ入る。
五条がお礼を言うとか…不吉…
そもそも、私的に今の五条の口調は鳥肌が立つ。
学生の頃はこんな話し方ではなかった。
夏油が消えてから、五条は変わった。
親が居なくなると急に逞しくなる子供みたいに、急激に大人に近づこうと背伸びをして努力する。
五条はまさにそれで、中身は精神年齢…甘く見積もって15歳かな。
当時、夏油をお手本に生きていた五条は、夏油が残した全ての言葉を遺言にでもしているようだった。
「…にしても、あの話は本当なの？」
「うん、もちろん。特級呪霊は間違いなく、Aに情欲を持って触れていた」
「信じられないんだけど」
「胸を触ってたんだ。凄く優しく」
「見たのか…？」
「不可抗力だよ。そんな睨まないで。溶ける」
知らない方が良いこともある。
今回のAと特級呪霊の事もそうだ。
五条がAを抱いて運んできた時、Aには五条のジャケットが掛けられていた。
医務室のベッドに寝かせてカーテンを引いてからジャケットを取ると、制服の隙間からAのブラが上にずらされているのが見えて絶句する。
すると…
「それ、綺麗に直してあげてくれない？ 何も無かった事にしたいんだ」
仕切りカーテン越しに五条が告げてきた。
Aがどういう状態か知ってる…？
そりゃそうか。Aを見つけたのは五条だ。
「分かった。あとは任せて」
「うん、よろしく」──…
…──
『何も無かった事にする』
当時はそれが私達の総意で、幾度となく真実を知りたがるAを誤魔化した。
何故Aが何度も特級呪霊に襲われるのか、という本来の重要な部分は特に気にも止めずに。
結果、Aは…
「さっき、行っちゃったよ」
「そうか…」
あの日と同じく、気を失ったAを抱いた五条が力無く言葉を紡いだ。
心を通わせた途端にこの仕打ち。
かつての親友のことも併せて、この男には一体どんな深い業があるというのだろう。
そして、Aの宿命も…
「部屋は整えてあるから、ゆっくり寝かせてやりな」
「うん…ありがとう、硝子」
あの日と同じ感謝の言葉。
悲しみを孕んで響く今回は、さすがに素直に受け止める。
重たい足を何とか前に押し出して、準備した部屋に向かう五条の背中に、それ以上かける言葉が見つからなかった。
*
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うさぎのおもち(プロフ) - ゆずあさん» ゆずあさんコメントへのお返事ありがとうございます。本当に素晴らしかったです。同じ思いで嬉しいです笑千年の恋の方も読ませて頂いています！是非最後まで読ませていただきます！( ߹꒳߹ ) (11月28日 22時) (
レス) id: 2be3f74d8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - うさぎのおもちさん» 熱いコメント＆感動＆号泣！こちらこそありがとうございます！(*T▽T*) 実は私も陰ながら宿儺との未来を応援していました笑 なので宿儺との物語は『千年の恋』で、思いつくまま気が済むまで書こうと決めています。見届けていただけると嬉しいです(*>∀<*)♪ (11月27日 23時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
うさぎのおもち(プロフ) - 宿儺と主人公を応援してたのでめちゃくちゃ読んでてしんどかった(泣)めちゃくちゃ号泣して頭痛いです笑また宿儺と出会って結ばれて欲しいです泣ほんとに素晴らしいお話読ませていただきました。次の作品も楽しみにしています。本当にありがとうございます (11月27日 22時) (レス) @page49 id: 4b465d9ef7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - みぃさん» 早速のコメントありがとうございます！頭の中でごちゃごちゃしている物語を整理しながら、ご期待に沿えるよう焦らず更新していきます！♪(/ω＼*) (2021年12月17日 6時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！この先の展開がとても気になります！更新楽しみにしてますね♪(◍•ᴗ•◍) (2021年12月17日 2時) (レス) id: c397bf8382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年12月16日 19時
