92 眠り姫〈五条side〉 ページ43
どうして、Aなのだろう。
千年前の世から、女性は星の数ほど産まれ生きているというのに…
「A。あれから半年が経ったよ」
Aが眠ったあの日から、季節は秋と冬をやり過ごし、花咲く春を迎えようとしていた。
それでもまだ、最愛の君は目を覚まさない。
数ヶ月前、僕の誕生日。
もしかしたら、誕生日だし目覚めるかもしれない…
…という乙女チックな淡い期待は、時計の針とともにあっさり無となった。
別に、誕生日を楽しみにしていた訳じゃない。
むしろ誕生日なんて、自由を奪われた“呪われた日”だと思っているくらいだ。
ただ…
内心、去年の誕生日は、できたばかりの可愛い恋人に祝ってもらえる事を密かに楽しみにしていた。
サングラスを外して直接Aの顔を眺める。
毎日、硝子が身体を拭いて、点滴やら何やら変えて世話をしているけれど…
物語に出てくる眠り姫みたいに、未だ愛らしい顔で小さな寝息を立てていた。
「眠っている君も可愛いけど、僕は君の笑顔が見たいんだよ、A」
時が止まったままの姿は天使か女神みたいに神聖で、触れるのは酷く気が引けるけれど、１日１回はAの体温を感じないと不安で仕方ない。
まだ生きているという、確かな実感が欲しい。
まだ独りじゃないという、確固たる安心を得たい。
そっと、頬に触れる。
柔らかい…温かい…
…まだ、生きている…
まだ大丈夫だ…独りじゃない。
絶対に、Aは戻ってくる…ッ！！
毎日、言い聞かせている物思い。
いい大人がバカみたいだと思うけど…
僕にはもう、Aしか残っていないんだ。
護りたいと、心の底から想える人間は…
Aに出逢ってから更に孤独が怖くなった。
独りになりたくないから全力で護ろうと思った。
他愛ない日々を過ごす内に、いつの間にか図らずも、Aからも想って欲しいと願うようになった。
それが、Aを困らせる選択肢を与えてしまうとも知らずに…
「ごめん、A。諦められなくて…」
自分本位は昔から。いや、産まれた瞬間からかな。
それが僕、『五条悟』なのだから仕方ない。
僕がAの手を放せば、Aの選択はどんなにか楽だったろう。
でももう…
大切な存在の手を放すのは…僕には耐えられないんだ。
だから、約束をした。
「戻ってきたら、責任取ってくれるんだよね？」
こんなに僕の心を虜にした重責。
Aにしか背負えないよ。
「愛が重いなんて文句、受け付けないから覚悟して♪」
身を乗り出してAに影を作り、何の反応も示さない柔らかな唇を啄んだ。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 259人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うさぎのおもち(プロフ) - ゆずあさん» ゆずあさんコメントへのお返事ありがとうございます。本当に素晴らしかったです。同じ思いで嬉しいです笑千年の恋の方も読ませて頂いています！是非最後まで読ませていただきます！( ߹꒳߹ ) (11月28日 22時) (
レス) id: 2be3f74d8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - うさぎのおもちさん» 熱いコメント＆感動＆号泣！こちらこそありがとうございます！(*T▽T*) 実は私も陰ながら宿儺との未来を応援していました笑 なので宿儺との物語は『千年の恋』で、思いつくまま気が済むまで書こうと決めています。見届けていただけると嬉しいです(*>∀<*)♪ (11月27日 23時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
うさぎのおもち(プロフ) - 宿儺と主人公を応援してたのでめちゃくちゃ読んでてしんどかった(泣)めちゃくちゃ号泣して頭痛いです笑また宿儺と出会って結ばれて欲しいです泣ほんとに素晴らしいお話読ませていただきました。次の作品も楽しみにしています。本当にありがとうございます (11月27日 22時) (レス) @page49 id: 4b465d9ef7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - みぃさん» 早速のコメントありがとうございます！頭の中でごちゃごちゃしている物語を整理しながら、ご期待に沿えるよう焦らず更新していきます！♪(/ω＼*) (2021年12月17日 6時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！この先の展開がとても気になります！更新楽しみにしてますね♪(◍•ᴗ•◍) (2021年12月17日 2時) (レス) id: c397bf8382 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年12月16日 19時
