84 サヨナラの足音〈五条side〉 ページ35
「A…？」
学長に呼ばれて、Aの部屋を出て15分。
眠っているしほんのちょっとだからと、Aから離れたのが間違いだった。
戻った時にはベッドにAの姿はなく、毛布もはだけたまま…
一体どこに…？
反射的に部屋を飛び出しスマホを取り出した。
そのタイミングで、
「悠仁！ A見てない！？」
かかってきた悠仁からの電話に、噛みつくように叫んだ。
先生としての威厳なんて、もはやどうでもいい。
元々そんなの意識したこともなかったし、Aが僕の隣に戻って来てさえくれれば何も問題ないんだから。
「五条先生、Aさん医務室にいるよ」
悠仁の答えに返事をする余裕もなく、容赦なく通話を切って走る速度を更に上げた。
かけていたサングラスも走る振動で揺れて邪魔になり、むしり取って投げ捨てた。
十数秒で辿り着いた医務室のドアを開けるのも時間の無駄な気がして蹴り破ろうかと思ったけど、それは寸前で思いとどまった。
けれど勢いは抑えられず、開いたドアは激しいスライドで荒々しい音を立てた。
「A！！」
視線を回して悠仁に抱きしめられているAを見つけ…
悠仁の腕の中から、愛しい柔らかな温もりを強引に奪い取り、きつく抱きしめてAの生の鼓動を確かめた。
「悟…さん…」
「A！ 勝手にいなくなるな！ 心配っ…しただろ！」
「起きたら…悟さん居なくて…」
「うん、ごめん…」
「医務室の備品…補充しないと…」
「備品補充は硝子がやるから大丈夫だよ」
何とか、Aの言い分に答えたけれど…
意識混濁、記憶錯綜、支離滅裂…
半分以上、持っていかれてる。
これはもう…
「五条先生…」
「ごめん、悠仁。Aと二人きりにしてくれる？」
Aの首筋に顔を埋めたまま、こもった声で突き放す言葉を伝える。
同じようにAに想いを寄せて心配している悠仁には悪いけど、別れのときは二人でいたい。
大切な生徒にはせめて、Aに泣いて縋るなんてかっこ悪い姿は見せないように。
「…っ」
悠仁の悔し気な息づかいが聴こえた後、遠ざかる足音とドアが閉まる音がやけに大きく医務室に響いた。
「悟さん」
唐突に、Aの愛らしい声がはっきりと僕の名前を紡いだ。
冷たい指先が僕の頬を撫で上げ、低い体温の手のひらが頬を包む。
「悟って呼んでよ。僕を呼び捨てる人が夜蛾学長だけじゃ寂しいじゃん」
「そう…ですね…」
緩く微笑むAの、頬に当てられた手を握って軽口を叩く。
重い雰囲気にならないよう表情筋を無理矢理動かし、笑顔を張り付け──…
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うさぎのおもち(プロフ) - ゆずあさん» ゆずあさんコメントへのお返事ありがとうございます。本当に素晴らしかったです。同じ思いで嬉しいです笑千年の恋の方も読ませて頂いています！是非最後まで読ませていただきます！( ߹꒳߹ ) (11月28日 22時) (
レス) id: 2be3f74d8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - うさぎのおもちさん» 熱いコメント＆感動＆号泣！こちらこそありがとうございます！(*T▽T*) 実は私も陰ながら宿儺との未来を応援していました笑 なので宿儺との物語は『千年の恋』で、思いつくまま気が済むまで書こうと決めています。見届けていただけると嬉しいです(*>∀<*)♪ (11月27日 23時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
うさぎのおもち(プロフ) - 宿儺と主人公を応援してたのでめちゃくちゃ読んでてしんどかった(泣)めちゃくちゃ号泣して頭痛いです笑また宿儺と出会って結ばれて欲しいです泣ほんとに素晴らしいお話読ませていただきました。次の作品も楽しみにしています。本当にありがとうございます (11月27日 22時) (レス) @page49 id: 4b465d9ef7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - みぃさん» 早速のコメントありがとうございます！頭の中でごちゃごちゃしている物語を整理しながら、ご期待に沿えるよう焦らず更新していきます！♪(/ω＼*) (2021年12月17日 6時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！この先の展開がとても気になります！更新楽しみにしてますね♪(◍•ᴗ•◍) (2021年12月17日 2時) (レス) id: c397bf8382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年12月16日 19時
