81 “縛り”の代償〈宿儺side〉 ページ32
「──お前に甘いな…」
Aを迎え入れる屋敷、部屋の中央にあぐらをかき頬杖をついた。
“その瞬間”が確実に近づいてきているのを肌で感じる。
「早くこちらへ来い」
「…お前に触れたくて、頭がおかしくなりそうだ…」
俺が千年前から求めてやまないのは、A、お前だけ。
触れて慈しんで、愛しいお前をこの腕の中で際限なく甘やかしたい。
そうでもしなければ、溢れ返るこの想いに心が捻り潰されて、このままでは我を忘れて全てを破壊したい衝動に抗えなくなる。
「あのとき、お前が俺を縛らなければ…」
Aの“縛り”が無ければ俺は間違いなく、
そしてその先に築かれた、隅々まで壊滅し荒廃した新世界の頂点に君臨していただろう。
覇権を握るという宿願がゼロになった訳ではないが…
あのときのAが“縛り”を課すために俺にした、あいつにとっては何気ない問いかけ。
純粋に、一番欲しいものは何かと聞かれたとき。
Aの真っ直ぐな眼差しに、素直な想いが自然と零れた。
最終的に俺の魂が選んだのは、
世界の覇権でも、富や地位でも、
絶対的で圧倒的な『力』でもなく…
A、お前だった──…
その答えが正しかったのかは知らない。
だが、その俺の答えによって、Aは自身の魂への“縛り”に条件を付けた。
それが俺にとっても“縛り”となったのだ。
Aが意図してそうしたのか、はたまた無意識か…
Aを奪われてから百年後の、あの再会のとき。
もう二度と離れたくないと、お前が望んだ“縛り”だった。
…──
「わたくし…もう二度と…あなたのお傍を離れたくありません」
「あぁ…俺も…二度とお前を離したくない」
素肌で抱き合い、引き寄せたAの髪にキスを落とす。
溺れるほど甘美で、震えるほどに愛しい。
『愛している』などという言葉だけでは足りない。
身体を重ねて繋げて初めて、全ての想いが伝い交わる幸福感。
「……。宿儺さま。一番欲しいものは何ですか？」
「俺は…お前さえ傍にいればそれでいい。他には何も望まん」
ゆったりと微笑むAから、甘え欲しがるような口づけを与えられた──…
『貴方が私を必要とする限り、私は貴方の傍で共に生きる』
この“縛り”の代償として、俺はAが傍に居る限り、その身の自由を奪われ、Aから離れることは出来ない。
外界への干渉を完全に断たれる。
それはもはや『封印』に近い“縛り”だった。
*
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うさぎのおもち(プロフ) - ゆずあさん» ゆずあさんコメントへのお返事ありがとうございます。本当に素晴らしかったです。同じ思いで嬉しいです笑千年の恋の方も読ませて頂いています！是非最後まで読ませていただきます！( ߹꒳߹ ) (11月28日 22時) (
レス) id: 2be3f74d8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - うさぎのおもちさん» 熱いコメント＆感動＆号泣！こちらこそありがとうございます！(*T▽T*) 実は私も陰ながら宿儺との未来を応援していました笑 なので宿儺との物語は『千年の恋』で、思いつくまま気が済むまで書こうと決めています。見届けていただけると嬉しいです(*>∀<*)♪ (11月27日 23時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
うさぎのおもち(プロフ) - 宿儺と主人公を応援してたのでめちゃくちゃ読んでてしんどかった(泣)めちゃくちゃ号泣して頭痛いです笑また宿儺と出会って結ばれて欲しいです泣ほんとに素晴らしいお話読ませていただきました。次の作品も楽しみにしています。本当にありがとうございます (11月27日 22時) (レス) @page49 id: 4b465d9ef7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - みぃさん» 早速のコメントありがとうございます！頭の中でごちゃごちゃしている物語を整理しながら、ご期待に沿えるよう焦らず更新していきます！♪(/ω＼*) (2021年12月17日 6時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！この先の展開がとても気になります！更新楽しみにしてますね♪(◍•ᴗ•◍) (2021年12月17日 2時) (レス) id: c397bf8382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年12月16日 19時
