79 異変〈五条side〉 ページ30
Aの異変は、その日最後の任務終わりに始まった。
「悟さん…何だか…急に、凄く…眠…ぃ…」
「A！？」
早くAの傍に戻りたくて、不安と焦りを抱きながら特級呪霊を秒で祓い、帳を解いて戻った車内。
極限状態で僕の帰りを待っていたAが、もう限界だと千々に紡いだ言葉の直後、僕の腕に身を委ねて気を失うように眠った。
「…は…？」
嘘…だろ…こんな、突然…ッ！？
いや、まだだ。
宿儺の呪力の気配はまだ薄い。
だからもう一度、Aは目覚める。
まだ時間は残されている。
「伊地知、高専に戻る。ホテルはキャンセルしておいて」
「はい…かしこまりました……Aさんは…？」
運転席から伊地知が僅かに振り返り、少し怯えたような震えた声で心配する言葉を投げてくる。
Aの事情は話してあるし、さすがに伊地知も気になるか…
「うん、眠ったみたい。でも大丈夫だよ、心配いらない」
「……はい……ッ」
納得など出来ないだろう、あまりにも軽薄な言葉で伊地知を
Aを両腕で囲い護るように強く抱きしめ、柔らかな温もりを感じて何とか自分の気持ちを落ち着かせる…
それでも心臓はバクバクと、耳の奥で重い鼓動を奏でていて一向に収まらない。
いつ、Aが僕を置いて居なくなるのか…
それがとにかく、怖くて怖くて仕方ないんだ…ッ
許されるなら、24時間こうして腕の中にAを閉じ込めておきたいくらいに。
過去に一度、無償で信じていた大切な存在を何の前触れもなく失った記憶が、簡単に僕を追い詰めて容赦なく奈落の底へと突き落とす。
Aが宿儺の元へと旅立つ事をどうしても止められないならせめて、別れの時は傍に居て『いってらっしゃい』と笑顔で送り出したい。
本当はガキみたいに泣きじゃくって、縋って引き止めたい。
けれどそんなのは、Aを困らせるだけだって分かっているから…
「…ごめん…ッ」
何もしてやれない、力になれない、助けてやれない事がこんなにも辛いだなんて、この歳になって初めて知った。
…いや違う…前にも一度…
何もしてやれなかった。
力になれなかった。
気づいてやれなかった。
止められなかった。
助けてやれなかった…
悔恨の想いに満ちたことがある。
あいつは救いを…
正しい答えを求めていたはずなのに…
なのに俺は…
「…悟…さん…」
「っ！？ A！…良かった…」
どす黒く深い闇に沈んで溺れそうになった瞬間。
高専に着く直前、不意にAが目覚めて、一番最初に僕の名前が吐息ととも零れ落ちた。
*
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うさぎのおもち(プロフ) - ゆずあさん» ゆずあさんコメントへのお返事ありがとうございます。本当に素晴らしかったです。同じ思いで嬉しいです笑千年の恋の方も読ませて頂いています！是非最後まで読ませていただきます！( ߹꒳߹ ) (11月28日 22時) (
レス) id: 2be3f74d8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - うさぎのおもちさん» 熱いコメント＆感動＆号泣！こちらこそありがとうございます！(*T▽T*) 実は私も陰ながら宿儺との未来を応援していました笑 なので宿儺との物語は『千年の恋』で、思いつくまま気が済むまで書こうと決めています。見届けていただけると嬉しいです(*>∀<*)♪ (11月27日 23時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
うさぎのおもち(プロフ) - 宿儺と主人公を応援してたのでめちゃくちゃ読んでてしんどかった(泣)めちゃくちゃ号泣して頭痛いです笑また宿儺と出会って結ばれて欲しいです泣ほんとに素晴らしいお話読ませていただきました。次の作品も楽しみにしています。本当にありがとうございます (11月27日 22時) (レス) @page49 id: 4b465d9ef7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - みぃさん» 早速のコメントありがとうございます！頭の中でごちゃごちゃしている物語を整理しながら、ご期待に沿えるよう焦らず更新していきます！♪(/ω＼*) (2021年12月17日 6時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！この先の展開がとても気になります！更新楽しみにしてますね♪(◍•ᴗ•◍) (2021年12月17日 2時) (レス) id: c397bf8382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年12月16日 19時
