73 痛みの共有 ページ24
「とりあえず、シャワー浴びて服着よっか」
悟さんの一言で、何も身に付けていなかった事を思い出し、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
そんな私の熱を発している頬を大きな手のひらが包み、
「ほんと、可愛い」
優しい微笑みの口づけと心を鷲掴む言葉で甘やかされた。
幸せすぎて目元が潤む。
「私は…悟さんが好きなんです」
「うん、知ってる」
「本当は離れたくないし、こうしてずっと傍にいて支えたい。でも…」
「……。」
「その為には宿儺との関係に、ちゃんと決着をつけないとダメなんです」
「…うん…そう言うと思った。想定内」
そう言って悟さんは、この世のものとは思えない極上の微笑みで私の心臓を貫き殺しかけた。
＊
じゃれ合いながら一緒にシャワーを浴びて、身支度を整える。
私が髪を乾かしている間に、悟さんが紅茶を準備してくれていた。
いつもと逆の光景に思わず小さく笑ってしまう。
「なに笑ってんの？ 早くこっちにおいで」
簡単な言葉で誘われて、大きなソファーに座る悟さんの隣に腰を下ろした。
と同時に背中から回される筋肉質な腕。
大きな手で腰を引き寄せられ、身体が密着する。
たったそれだけで、つい先刻、優しく丁寧に愛された記憶が蘇ってお腹の奥が疼いた。
コテン…と、頭に頭が乗せられて、反射的に肩をすくませる。
そうして悟さんは甘えるように頬を擦り寄せて私の髪にキスを落とし、無言で話を促して…
私は意を決するために、ひとつ大きく深呼吸をした。
ずっと胸に秘めたまま、そう遠くない未来に辿り着く死の先まで持っていくつもりだった物思い。
私を心から求めてくれる悟さんになら、正直に話してもいいと思った。
だから…
「私…ずっと怖くて逃げていたんです」
「人間の負の感情から…そこに生まれる呪霊から」
少しずつひとつずつ、自分で自分の心の結び目をほどいていくように、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「特級呪霊に囚われていた間、ひっきりなしに与え続けられました。人間の悪意、罵詈雑言、負の感情が辿る道のりのすべてを…呪霊になるまでの経緯を事細かに…」
ほんの僅か、私の腰を抱く悟さんの腕に力が込められた。
見なくても分かる。
今、悟さんは私の心の痛みを共有してくれている。
たったそれだけの事が私の心を救って、潜めた想いを吐露する勇気に変わるんだ。
「精神を破壊するほどの人間の醜さに心底怯え…ッ…私は私を失う寸前で…心を閉ざして逃げ出したんです…ッ」
「だから私は…ッ」
伝える言葉尻が詰まり、溢れる涙と共に次第に口元が震え始めた。
*
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うさぎのおもち(プロフ) - ゆずあさん» ゆずあさんコメントへのお返事ありがとうございます。本当に素晴らしかったです。同じ思いで嬉しいです笑千年の恋の方も読ませて頂いています！是非最後まで読ませていただきます！( ߹꒳߹ ) (11月28日 22時) (
レス) id: 2be3f74d8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - うさぎのおもちさん» 熱いコメント＆感動＆号泣！こちらこそありがとうございます！(*T▽T*) 実は私も陰ながら宿儺との未来を応援していました笑 なので宿儺との物語は『千年の恋』で、思いつくまま気が済むまで書こうと決めています。見届けていただけると嬉しいです(*>∀<*)♪ (11月27日 23時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
うさぎのおもち(プロフ) - 宿儺と主人公を応援してたのでめちゃくちゃ読んでてしんどかった(泣)めちゃくちゃ号泣して頭痛いです笑また宿儺と出会って結ばれて欲しいです泣ほんとに素晴らしいお話読ませていただきました。次の作品も楽しみにしています。本当にありがとうございます (11月27日 22時) (レス) @page49 id: 4b465d9ef7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - みぃさん» 早速のコメントありがとうございます！頭の中でごちゃごちゃしている物語を整理しながら、ご期待に沿えるよう焦らず更新していきます！♪(/ω＼*) (2021年12月17日 6時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！この先の展開がとても気になります！更新楽しみにしてますね♪(◍•ᴗ•◍) (2021年12月17日 2時) (レス) id: c397bf8382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年12月16日 19時
