72 伝えたいこと ページ23
『私が直接言ってもいいんだけど、悟とはすぐ喧嘩腰になってしまうから…伝わるものも伝わらない』
青い春の思い出が蘇ったのか、夏油さんが本当に嬉しそうに笑うから、思わず“最悪の呪詛師”であることを忘れてしまう。
『君から伝えてくれた方がきっと、悟には響く』
「さて、本題」と、切な気に遠くに飛ばしていた視線を不意に私に移されて、その妖艶な微笑みに図らずもドクンッと胸が鳴った。
無言のまま立ち尽くす私の向こう側にいる、大切な相手に語りかけるように、優しい声音が辺りを包み込んだ。
『私は間違っていない。けれど正しくもない』
『自分を強く信じること。自分の選択を疑わず信じること。それが正解なんだ』
『進む道は別れてしまったけれど、私も自分の信じる道を歩いて行こうと思う』
『だから悟…君は君の信じる道を進んでくれ』
『誰が何と言おうと、自分で決めた道の先の未来が、悟にとっての真実となるのだから』──…
…──
「私は、単純に『ごめんね』って言いたかったんだと思ってます」
沢山たくさん言葉を貰ったけれど、夏油さんが悟さんに一番伝えたかった想いは、子供みたいに純粋な『ごめんね』だと思う。
「事件を起こして呪詛師になってしまったから、そんな一言も今更言ったって無意味だと…。だから、素直に言えない代わりに沢山の言葉を──」
「──うん…分かってる。あいつ、本当にひねくれてるから…」
あの日の夏油さんと同じ、切なくも嬉しそうな笑顔を浮かべた悟さん。
脳裏に蘇る思い出は、間違いなく幸せな日々なんだろう。
「俺さ…学生の頃、傑が善悪の指針だったんだ。だから、あいつが居なくなった後、どうやって前に進めばいいのか分からなくなった」
「そんな俺に、傑も気づかない訳がない」
堰を切ったように紡がれる悟さんの想いを、しっかりと心で受け止める。
夏油さんに出逢った後の決意通りに…
「傑という道標を失った俺は、実家に引きこもって考えに考えて、教師として呪術師を育てる道を選んだ」
「呪術師だからって辛く悲しい思いを背負って生きる必要はない」
私は悟さんの為なら何でもする。
「今の上層部が歯牙にもかけない末端の術師まで手を差し伸べる…その為には強くて聡い仲間が必要だ」
「俺一人が強くても意味ないんだよ」
射し込む朝陽に煌めく瞳を細めて、悟さんが破壊力抜群の微笑みを披露すると、
「そろそろ君も本音を話してくれない？」
『君も本音を明かして悟を支えてあげて欲しい。あいつ、きっと喜ぶから』
あの日の夏油さんは、心底楽しそうに微笑んだ。
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うさぎのおもち(プロフ) - ゆずあさん» ゆずあさんコメントへのお返事ありがとうございます。本当に素晴らしかったです。同じ思いで嬉しいです笑千年の恋の方も読ませて頂いています！是非最後まで読ませていただきます！( ߹꒳߹ ) (11月28日 22時) (
レス) id: 2be3f74d8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - うさぎのおもちさん» 熱いコメント＆感動＆号泣！こちらこそありがとうございます！(*T▽T*) 実は私も陰ながら宿儺との未来を応援していました笑 なので宿儺との物語は『千年の恋』で、思いつくまま気が済むまで書こうと決めています。見届けていただけると嬉しいです(*>∀<*)♪ (11月27日 23時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
うさぎのおもち(プロフ) - 宿儺と主人公を応援してたのでめちゃくちゃ読んでてしんどかった(泣)めちゃくちゃ号泣して頭痛いです笑また宿儺と出会って結ばれて欲しいです泣ほんとに素晴らしいお話読ませていただきました。次の作品も楽しみにしています。本当にありがとうございます (11月27日 22時) (レス) @page49 id: 4b465d9ef7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - みぃさん» 早速のコメントありがとうございます！頭の中でごちゃごちゃしている物語を整理しながら、ご期待に沿えるよう焦らず更新していきます！♪(/ω＼*) (2021年12月17日 6時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！この先の展開がとても気になります！更新楽しみにしてますね♪(◍•ᴗ•◍) (2021年12月17日 2時) (レス) id: c397bf8382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年12月16日 19時
