69 10年越しの想い〈家入side〉 ページ20
「硝子はまだ僕のこと、クズだって思ってるんでしょ？」
「うんまぁ、女性関係は特に」
「…だよね。僕もそう思うよ…」
「五条。私の前では取り繕わなくていい。その方がこっちも楽」
五条に頼まれた部屋の準備を整え、そう言って振り向くと、目隠しを片目だけ親指で上げた五条が私を見つめていて、久しぶりに綺麗すぎる瞳と再会した。
「硝子から、そんな優しい言葉かけられたの初めてだ」
色素の薄い瞳は、僅かな光も眩しくて不快だろうと、学生の頃からずっと思っていた。
そのアイスブルーの瞳がゆっくりと細められ、惜しみなく魅力を振り撒いている。
確かにね、こんな表情を見せられたら、その辺の女なんてイチコロだ。
性格が歪んでなければ無敵の破壊力。
自分の容姿の攻撃力を熟知している五条は、たまにこうして呼吸をするように自然に煽ってくるからタチが悪い。
「そういうの私には効かないよ、五条」
「別に…そういうんじゃねぇっつーの」
ぶう…と不満を頬に込めて膨らませる様子は、28歳の男とは思えないし、だいぶ引く。
でも…
「真面目な話、過去に何があったのか知らないけれど、Aは聖母みたいな子なんだ。君の全部を受け入れてくれる。安心して本音を話してみなよ」
「…そう…かな…だと、いいけど…」
密かに、柄にもなく思い悩んでいる同期の背中を押すくらいは出来る。
夏油ほどスマートには出来ないけれど…
目隠しの奥で微笑んだ五条は
「あとは器具を運ぶだけだから、私は仕事に戻るよ」
「助かったよ硝子。ありがとね〜」
調子の良い言い回しに、五条の推測が当たらなければいいと思った。
けれど五条は、そういう“勘”は外さない。
あの事件の後からはずっと…
出会う人々を値踏みして、少しでも怪しめば神経を張り巡らせて警戒する。
そういう五条の黒い部分を知ってる人間は少ない。
Aにも隠しているくらいだからな。
でもそれって、もの凄く精神を削る行為だ。
根底にある優しさと才能ゆえに、人並み以上の使命を負ってしまう。
生まれた瞬間から億超えの懸賞金をかけられて命を狙われ、必然的に学校には通えず、必然的に独りで強くなるしかなかった。
そして必然的に呪術師になって、非術師どころか周りの術師をも護り、必然的に五条家の当主になった。
大切な親友をその手にかけ、自由なんてなかった人生の中で、生涯を共にする相手くらい自由に選んで欲しい。
私が五条にそんな事を思うなんて…
「確かに、大人になったのかも」
月明かりに照らされた廊下の途中で呟いた。
*
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うさぎのおもち(プロフ) - ゆずあさん» ゆずあさんコメントへのお返事ありがとうございます。本当に素晴らしかったです。同じ思いで嬉しいです笑千年の恋の方も読ませて頂いています！是非最後まで読ませていただきます！( ߹꒳߹ ) (11月28日 22時) (
レス) id: 2be3f74d8b (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - うさぎのおもちさん» 熱いコメント＆感動＆号泣！こちらこそありがとうございます！(*T▽T*) 実は私も陰ながら宿儺との未来を応援していました笑 なので宿儺との物語は『千年の恋』で、思いつくまま気が済むまで書こうと決めています。見届けていただけると嬉しいです(*>∀<*)♪ (11月27日 23時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
うさぎのおもち(プロフ) - 宿儺と主人公を応援してたのでめちゃくちゃ読んでてしんどかった(泣)めちゃくちゃ号泣して頭痛いです笑また宿儺と出会って結ばれて欲しいです泣ほんとに素晴らしいお話読ませていただきました。次の作品も楽しみにしています。本当にありがとうございます (11月27日 22時) (レス) @page49 id: 4b465d9ef7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずあ(プロフ) - みぃさん» 早速のコメントありがとうございます！頭の中でごちゃごちゃしている物語を整理しながら、ご期待に沿えるよう焦らず更新していきます！♪(/ω＼*) (2021年12月17日 6時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！この先の展開がとても気になります！更新楽しみにしてますね♪(◍•ᴗ•◍) (2021年12月17日 2時) (レス) id: c397bf8382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年12月16日 19時
