rainbow box！ 9th

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淳太











『 今日夜空いとる？
空いとったらしげのとこ行って欲しいんやけど』






神ちゃんから連絡をもらって、
仕事のあと病院へ向かう。




とっくに面会時間は過ぎとるけど、

こういうとき、芸能人対応はありがたい












「 しげ？… 寝とるか」





非常灯だけ付いた薄暗い病室に入る。


夜の病院は、嘘みたいに静かや。





まだ22時を回ったとこやけど、

もう寝てるんか。








「 じゅんた、？」



「 あぁ、ごめん、起こした？」



「 んーん、寝とらん…」



「 おわ、…熱でとんの」








声だけ発してピクリとも動かないから
ベッドサイドに移動すると



真っ赤な顔と、頭の下には氷枕。







神ちゃんから聞いた、しげの体調が思わしくない話。





昼会ったときは元気そうやったって言うとったけど、

しげがこうなることがわかっとって、
俺を行かせたのかもしらん。











「 …夜になると、たまにな、」



「 知らんかったよ。

…そういうの、俺ら知りたいんやけど」







何かを考えているような、
熱に浮かされて何も考えていないような、


よく分からん表情で、無言。




こういう時、付き合いがどれだけ長くても
こいつの感情は読み取れない。










「 歌詞書いとったん？」




ベッドサイドの棚にはいつものノートと鉛筆。






「 … 書こうかなって、おもってんけど」



「 うん、」



「 一文字も、書けへんかった」






さっきまでの読み取れなかった表情に
悲しみの色が染まる。









「 俺は、…… っ、」











“ 怖い ”

















怪我をして、

入院して、

仕事と距離が空いてから、





初めて弱い姿を見せた夜やった。



















俺が今夜来なかったら、

この苦しい夜を、
身体を固くしながらひとりで越えていたのかもしれない。




いやきっと、もう何度も何度も

こうやって越えるしかない夜を過ごしてきたんやろう。







周りをぐんぐん巻き込むエネルギーがあるしげやけど

ネガティブな感情を誰かに表出するのが
どれだけ苦手かってことも、

知っとったはずやのに。







不甲斐なさが一気に押し寄せて、

浅い呼吸をする胸に、手を置いてさする。






ぽろ、と吐き出した言葉に後悔があるのか、

俺を見る目には分かりやすく迷いが浮かぶ。






迷惑も、面倒も、
いくらでも大歓迎なんよ。



俺らは何をぶつけたって、
手を離さない関係やねんから。

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