ファンサうちわ【S.K】

番外編〇6 ページ21

「ごめん」

「！？」



煽る男たちを前に、俺は彼女にキスをしてしまった。

ドラマの撮影時みたいに、唇を外して頬にすればよかったのに。
何故か俺はしっかりと唇に触れるように口付けた。


だってその、なんか悔しいし。
俺じゃここまでしないと彼氏に見えませんか？ってね。
一応アイドル！シゲ、アイドルなの！オーラありませんか！？


…しかしこれじゃこのモデル男くんと同じだ。
自分のプライドのために彼女にこんなことをしてしまって、我ながら大人げないなと少しばかり後悔した。



触れる程度のキスをして唇を離し、男たちを睨みつける。



「これで満足？」

「本当にすんのかよ、キショ.......行こうぜ」




その後男たちはすぐに離れていき、彼女と2人きりになった。




気まづい、非常に。



彼氏のこと大好きって言ってたのに…俺彼氏にボコられるんじゃ？



「あ、あの」

「ん…？」

「その」


ちなみに、一見クールに装っているが絶賛コミュ障発動中。
そんな俺を見兼ねたのか、彼女の方から口を開いた。



「助かりました。私1人じゃあのまま連れて行かれてました…ありがとうございます。」

「は、はぁ....」



彼氏がいるのにキスなんかしてどうしてくれるんですか！
とでも言われるのかと思っていた。
しかし返ってきたのはお礼の言葉。
拍子抜けてつい変な声を出してしまった。


この子はお礼を言ってくれてるけど、状況はどうであれ彼氏がいると知っていながら愚行に及んでしまった。
一応謝っておく必要があるだろう。



「俺はその、ごめん。彼氏がいるのに俺みたいな通りすがりの男がキスなんかしちゃって。あんな奴らの言うこと無視して逃げればよかったんだけど」

「....その事なんですけど」

「ん？」



なにやら言いたげにモジモジしだした彼女。


え、もしかして地雷踏んだ？
彼氏ってワード地雷だった？



「じ、実は彼氏いません！！」

「えーーー！？」




彼氏いない！？

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