エオリアンハープ

☆★☆★ ページ10

「すごいや！」

やがてその曲が終わり、俺は、思わず手をたたいていた。


「！！ だ、誰？！」
「あ、ごめん！びっくりさせちゃって。ここの前を通ったらピアノの音がきこえたんで、ついつい部屋に入ったら、すごく上手なんで思わず聴き入っちゃった。」
「え？！」
「きれいな曲だよね。なんて曲？」
「。。。ショパンのエチュード1番。エオリアンハープ、って言ったほうがわかるかしら」
「。。。ごめん。俺あんまピアノには詳しくないから、ショパンしかわかんないや。」
「。。。曲名聞いておきながら面白い人ね。でも、ありがとう。
　え？わ！もうこんな時間！行かなきゃ！！」
「行くって、どこへ？」
「ピアノのレッスン！ ごめんね、ここ、音楽の先生に借りてるから鍵を閉めて返さないといけないの。ちょっと悪いけど、部屋から出てくれる？ わ〜！急がなきゃ！！！」


ピアノに向かっていた時の表情とは一転して、わたわたと慌しい表情にせかされて、柔らかな音の余韻に浸る間もなく、俺は部屋から追い出された。
その子はピアノの横の机においていたカバンを持って部屋を出ると、ばたばたと鍵を閉めて、さっき俺が出てきた職員室のほうに向かって走っていってしまった。




な、なんなんだよ？！一体。。。



でも、エオリアンハープ、か。きれいな曲だったな・・・



あ！こんなとこでぼーっとしてる場合かよ！俺も急いでいるんだった！！


ばたばたと走っていった彼女とは違う方向へ、俺も走っていった。
やっべ、遅れると奈々美先生に怒られる！

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