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そして土曜日。午前中は朝練のあと補講に行き、夜はリンクを貸切で練習することにして、午後からの時間を作った。
なんとなく、というか、やはり、というか、彼女がどんな曲を弾くのかに興味があった。
・・・とはいえ、スケートの競技会しか経験の無い俺には、ピアノの発表会なんて妙に敷居が高く感じる。
でも、そんな大きなコンサートホールとかじゃないし、いつも音楽室に来るような感じで来てくれればいいと彼女は言っていたし、ま、いっか、と、あの時渡されたプログラムに書かれた簡単な会場の地図を見ながら電車に乗る。
20分ほど電車に揺られて着いたのは、駅前の三階建てのビル。
1階には小さなスーパーやファストフード店、2階は役場の出先機関のような施設が入ったビルの3階が会場と書いてあったので、妙なところが会場なんだと思いながらエスカレーターで3階へ向かう。
エスカレータを降りるとすぐ目の前に「アクアホール」と書かれたガラス扉があり、どうやらこの階はこのホールだけのようだ。
1階にあったスーパーとのあまりの雰囲気の違いに軽く驚きながらも、ガラス扉を開けて中に入ると、いきなり白いシャツに蝶ネクタイをつけた男の子が、こちらに向かって必死で走ってきた。
その後ろから「ゆうく〜ん!待って!!」と追いかけて出てきたのは、彼女だった。
いや、正確にはそれが彼女だと認識するには、ほんの少し時間がかかった。
いつもの彼女はブレザーの制服を着て、セミロングのサイドの髪を耳の上あたりでかき上げ、後ろでまとめてクリップのような髪留めで留めている。
だが、その男の子を追いかけてきた彼女は、髪の毛をアップにしているせいで、白いうなじがあらわになっている。ゆるくあげられた髪は女子のフィギュア選手の様にお団子状にきっちりまとめられたものではなく、毛先がふわふわとカールされたようになっていて、走るたびにその毛先が軽く踊っている。
洋服も、紺のシフォン生地のような柔らかな、膝丈のシンプルなワンピース。
その清楚で、でもさりげなく華やかな感じに思わずドキッとなってしまう。
「羽生君、ごめん、その子捕まえて!」
「へ?!」
突然声をかけられて変な声を上げたのとほぼ同時に、彼女から隠れるようにその男の子は俺の脚にしがみついてきた。
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ゆー - いろいろな曲を知れると思うとワクワクしますヾ(o´∀`o)ノ (2015年5月24日 0時) (レス) id: e6615b165f (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - ゆーさん» ゆーさん。エオリアンハープ。あの透明感が私は大好きです。夢主にはあと数曲弾いていただく予定です♪ (2015年5月23日 0時) (レス) id: b5b2743f5c (このIDを非表示/違反報告)
ゆー - 「さゆ」って友達のニックネームと一緒だ~なんて興味本位で読み始めたのに今はクラッシックに興味があります(笑)まさに運命!?なんて思ってます(〃ω〃) (2015年5月22日 23時) (レス) id: e6615b165f (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - りまさん» りません。はじめまして!私、りまさんの作品が大好きで、いつも読ませていただいてます。すごく丁寧に書かれていていいな〜、って。私もがんばりますね♪ (2015年5月21日 22時) (レス) id: b5b2743f5c (このIDを非表示/違反報告)
りま(プロフ) - はじめまして!りまと申します。わたしもショパン大好きです♪続きを楽しみにしています。更新がんばってください! (2015年5月21日 6時) (レス) id: e12e9a56b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さゆ | 作成日時:2015年5月18日 23時