発表会 ページ21
相も変わらずなんとなく音楽室に来て、窓の外に見える雲の動きをぼんやり眺めてピアノの音を体に感じていると、ふとその音が止まり、彼女が俺の方に近づいてきた。
「羽生君、この間はありがとう。挨拶もせずに帰ってしまってごめんね。」
「いやいや、俺も急に誘ったし。すぐに飽きちゃった?」
「うううん、その逆。あまりの迫力にびっくりして、じっと見てるとちょっと疲れちゃったから。」
見てるだけで疲れるなんておかしいよね、と、小さく笑う彼女。
「それで、私の方もよかったらなんだけど。」
「?」
そう言って、彼女が俺の目の前に差し出した2つに折られた薄い緑の紙には「ピアノ発表会」と書かれてある。
「??」
「いつも練習ばっかりで申し訳ないから・・・」
「あ、いや、それは・・・」
「私がずっと小さいときから習っている先生の教室の発表会なの。来週の土曜日なんだけど。」
「え?でも西崎さんが習ってる先生、ってことは西崎さんみたいな人ばかりが出るってこと?」
うーん、何といえばいいんだろうか。ピアノが気に入ったと言えばもちろん気に入ったのだけど、別にコンサートに行ってみたいとか、いろんな曲を聴いてみたいとか、そんなのとは微妙に違うんだよなぁ。
実際、あの日、勢いに任せてショパンのCDを買ったのはいいが、エオリアンハープ以外の曲で2,3曲いいな、と、思う曲はあったものの、正直最初からずっと聴いていると飽きてきた、というのも事実だし。
なので、発表会、などと言われても、間違いなく退屈しそうな自分がいる。
ここに来るのは、なんとなく体にしみこんでくるピアノの音が心地いいだけ、というか・・・
いや、そんなことを言うと一生懸命練習している彼女にすごく失礼だし、なんて言えばいいんだろう・・・
64人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆー - いろいろな曲を知れると思うとワクワクしますヾ(o´∀`o)ノ (2015年5月24日 0時) (レス) id: e6615b165f (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - ゆーさん» ゆーさん。エオリアンハープ。あの透明感が私は大好きです。夢主にはあと数曲弾いていただく予定です♪ (2015年5月23日 0時) (レス) id: b5b2743f5c (このIDを非表示/違反報告)
ゆー - 「さゆ」って友達のニックネームと一緒だ~なんて興味本位で読み始めたのに今はクラッシックに興味があります(笑)まさに運命!?なんて思ってます(〃ω〃) (2015年5月22日 23時) (レス) id: e6615b165f (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - りまさん» りません。はじめまして!私、りまさんの作品が大好きで、いつも読ませていただいてます。すごく丁寧に書かれていていいな〜、って。私もがんばりますね♪ (2015年5月21日 22時) (レス) id: b5b2743f5c (このIDを非表示/違反報告)
りま(プロフ) - はじめまして!りまと申します。わたしもショパン大好きです♪続きを楽しみにしています。更新がんばってください! (2015年5月21日 6時) (レス) id: e12e9a56b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さゆ | 作成日時:2015年5月18日 23時