エオリアンハープ

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それからというもの、俺は時間を見つけては放課後の音楽室に行くことが増えた。たいていの場合は彼女は練習に没頭していて、こちらに気づく前に時間が来て部屋を出ることがほとんどだったが、俺に気づいたときは、彼女はちょっと恥ずかしそうな笑顔を浮かべてこちらをみて、すぐにピアノに視線を戻す。


よくもまぁこんなに小さな体で、手も決して大きそうには見えないのに、こんなに力強い音が出るもんだと感心したり、どうやって指を動かしてるのか見当もつかないスピードでいくつもの音が次々と聞こえてくることに驚いたりで、なんかすげーよな。


練習でジャンプがうまくいかずイラついているこの頃だけど、彼女の奏でる音を聴くと、なんとなくほっとする。


俺、何しにここに来てるんだろ？？いや、ピアノを聴きに来てるんだよな。。。。


自分で言って、自分で突っ込みつつも、さらに考えてみる。

「聴きに来てる、といっても、一つの曲をじっと聴いていることはないし、ただ単に音を感じにきているというか、なんか一息つきに来てるというか？？ うーん・・・・」

　そんなことを思いながら、彼女の後ろにある窓の方に目をやる。でも、そんな俺の様子なんて全く気にすることも無くピアノを弾く彼女。


ま、いっか。って、何がいいのかよくわかんねーけど・・・






「ゆづ、最近何かあった？」

いつものようにリンクに入り練習を始めると、奈々美先生が声をかけて来た。

「最近？いや、特に何も。。。 ってか何でですか？」
「あ、いや、なんかあれだけジャンプがうまくいかなくて必死になってる割には、妙に落ち着いているな、って思って。高校生になってちょっと成長したのかな？」
「成長ねぇ。どうなんだろ？別に自分では何も変わってないと思うけど。」
「ふぅん。そっかなぁ。」


先生は何かもっと言いたそうだったが、すぐにジャンプの練習に移った。



だけど、4回転はそんなに簡単なものではなく、何度やってもなかなか成功確率が上がらない。跳んでは転んで氷の上にたたきつけられ、また跳んでは転んでフェンスに激突し、で手も足も生傷だらけになる。

ちっきしょー、小学生のガキじゃあるまいし、なんでこんなに傷だらけになるんだか。どうすりゃ跳べるようになるんだよ。
こんな状態で、落ち着いてなんていられねーよ。成長なんて全然してねーし！！


あー！できねー自分に腹が立つ！！

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