どなたですか？ (ページ41)

今日:19 hit、昨日:212 hit、合計:13,874 hit

・ページ41

彦四郎】「カナメさん！」
本を読んでいると大きな声で彦四郎君に呼ばれた

『どうしたの？』
彼の方に視線を移すと全身が透け始めていた

『…そっか、お別れだね』
本を閉じて彼の方を向く
少し慌てている彼を落ちつかせて、直していた忍び装束を取り出し渡す

彦四郎】「カナメさん、本当に僕たちお別れなんですね」

『そうだねぇ
よかったね、元の君がいた場所に帰れるんだよ』
着替えている彼を見ないよう後ろを向く

『ここでの生活は楽しめたかな？
忍術学園に帰ったら数馬君にもよろしく言っといてね』
後ろからトンッと抱き着かれる
着替え終わった彦四郎君が抱き着いてきたのだ

彦四郎】「僕、忘れません
最初は不安でいっぱいだったけど、カナメさんと居れて楽しかったです
ご飯、美味しかったです
本も面白かったです、主人公が犯人だとは思いませんでした
勉強も手裏剣も、手伝ってくれてありがとうございました
お世話になりました
本当に、ありがとうございましたっ！」
泣きながらも笑顔でお礼を言ってくれる彦四郎君を
正面に向き直し抱きしめる

『こちらこそありがとう
君との一日一日が楽しかったよ
戻っても元気でね、頑張りすぎちゃダメだよ？』
それじゃあ、と言って体を離す

『バイバイだね、彦四郎君』

彦四郎】「はい…さようなら、カナメさん」
彼に手を振る
涙をこらえて笑顔で手を振り返してくれる彦四郎君が見えなくなっていき
やがて消えた

『行っちゃった、』
彦四郎君の影も気配もなくなり、帰ったのだと実感する
最初は泣いていた彼も数日の間、何度も笑顔を見せてくれた
楽しかった日々を思い出し、少し寂しくなる

『はぁーあ、仕事するのが嫌になっちゃう』
こんな日でも入っている仕事に嫌気がさす
もちろん放り出すわけにはいかないし、放り出すつもりもない
でも今日くらいは休みたくもなる
重い腰を上げて仕事までの時間をつぶす
また今日も変わらない時間が過ぎていった