本日のおしながき。 (ページ14)

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キャンプサイトへ到着し、昨日下拵えした食材をクーラーボックスから次々と出し調理に取り掛かる。

『キャンプって火加減が難しいよな～』

「そうだね…」

彼女は明らかに元気がない。

せっかくの休日、今年は行くことが出来ないと諦めていた野外フェスにAと来れたというのに。

こんな悲しそうな彼女はもう、見たくない。

手を取りテントの中へ導き、彼女を抱き寄せる。
ここなら、誰の目も気にしなくていいでしょ？

『ごめんな、俺がもっとしっかり周りに気をつけてたらよかったのに。Aと来れたことが嬉しくて、そういうの、忘れてて…』

「しげくんは悪くないの。悪いのはわたしなの。」

『なんで？』

「しげくんがいっぱい息抜きできるようにって思ったのに…わたしが注意してたらよかったのに…」

『それね、Aが謝ることじゃないから。いつもお前のお陰でたくさん息抜きさせてもらってるから。本当、ありがとう。いつも気を遣わせてごめんな。ほら、せっかくの休日だし、俺、今日すっげえ楽しみにしてたの。だからさ、さっきのことは忘れて楽しまない？』

頷く彼女をもう一度強く抱き締めた。

あれ？なんか、焦げ臭い…？

『「………ホイル焼き！！！！」』

網の上で真っ黒焦げになったアルミホイルをみて二人で笑った。

アルミホイルを開いて見ると、外のそれからは想像できないほどちょうどいい具合に蒸し上がった蛤と帆立があった。

『やっぱ火加減が難しいよな。』

「難しいね」

顔を見合わせて笑う。

笑顔の彼女をみて、これから先もこの笑顔を一番近くで見ていたいと願う。

二人で肩を並べて食べるホイル焼きの味はこれから先もきっと忘れることのない、特別なもの。

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