Episode 25 − 硝子夜空 ページ30
「……」
彼が部屋を出ていった事を音で確認した後、私は近くに置いてある鞄から携帯電話を取りだし、ある人物へと電話をかけた。
「もしもし、俺だ。何か用事か?」
そう、電話の相手はあの下品な笑いかたをする医者である。私は相変わらず病院での性格とのギャップに馴れていない為に何時も少しだけ驚いてしまったりもするのだが、まぁ、それは今は関係の無いことだろう。
「えぇ。村山利香はどうなったのかしら?」
「あァ、彼奴か。来月にはあの病院に居ないと思うぜ? いやぁ、彼奴の泣きっぷりは最高だったよ。思わず笑っちまうトコだった」
私の遠慮の無い質問に遠慮の無い答え。二人して声を抑えて喉で笑った。きっと誰かが見れば『何だコイツら』状態である。
「流石、仕事をこなして頂いて大変結構よ」
数分間しきりに笑った私達。やっと笑いの収まってきたタイミングを見計らって、私はそんな声をあげる。仕事__あの場面で村山利香の声を彼に録音して病院に提出してもらうことによって私は彼女の仕事を失わせたのだ。
「いーえ。それで? 用は其れだけか?」
「もうひとつだけ。今、私は彼の家に居るんだけれど、彼、今晩狼になるらしいのよね。だから逃げようと思ってるの。迎えに来てくれない?」
彼は数秒間黙り込んだかと思うと、いきなりきひひゃはぁ、とまた笑いだした。彼の行動に、裏なんてものは無い。彼は純粋に楽しんでいるのだ。此の、可笑しな状況を。まさに他人の不幸は蜜の味である。
「それに。私は彼が恋と愛の差別すら出来ない人間じゃないのかどうか、知りたいんですもの。結果によっては一生を捧げても構わないわ」
「おぅ、分かったぜ。つまるところ彼を試したいわけだ。」
「そうね。で? 来てくれるのかしら」
「勿論、喜んでお引き受けしますよ、っと」
ふざけた口調の彼に適当な返事を打つと、私は電話を切る。そして藍守に気付かれない様に玄関からヒールを履いて外へ。数分後には高級車に乗った彼が来ていた。
「それじゃあ運転士さん、宜しくね」
「おー。任せときな、お嬢ちゃん」
先程のお返しだ、と言わんばかりの言葉を返すと、其れにも返される悪戯な言葉。まるであのクールに見える部下みたいだ。これは一本取られたわね。私は密かに微笑んでみせた。
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梅藍(プロフ) - ユユリンさん» ?(°д°;)ノノ (2017年8月16日 20時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
ユユリン(プロフ) - 梅藍さん» フフふー(*´∀`) (2017年8月16日 19時) (レス) id: 09ad9bf273 (このIDを非表示/違反報告)
梅藍(プロフ) - ユユリンさん» 私のグラスが一番人数少ないんですけどねw17人です。多かったときは23人居たんですけど……!話がずれてる (2017年8月16日 16時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
ユユリン(プロフ) - ほうほう…(^ー^) (2017年8月16日 16時) (レス) id: 09ad9bf273 (このIDを非表示/違反報告)
梅藍(プロフ) - ユユリンさん» うちの学校人数少ないので、小中一貫なんです。超田舎w (2017年8月16日 12時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
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