Episode 20 ― 硝子夜空 ページ20
いくら言葉では強がれても、私は所詮力を持たない女。久し振りに頭の中は恐怖にいっぱいになり、身体が震えて立つことさえ出来なくなってしまっている。
微かに残るカーディガンの温もりが私を守ってくれていて、泣きそうなのをなんとか抑えていられた。チラリと顔をあげると、看護師の彼女は散々な周りを見て一瞬だけ固まる。
そして唇を歪ませ、あはは、と笑い出した。
「まぁ、私の藍守さんならこれくらいしてくれるとおもってたぁ! 強くて格好いいよぉ」
甘えるような猫撫で声とハートの瞳。今までの冷静な彼女がぼろぼろに崩れていき、女の本性が露になっていく。彼女はきっとああやって何人もの男を落としていったのだろう。
「やぁっぱり、あの女より私の方が藍守さんにふさわしいぃ〜。 そぉだ、結婚しようよぉ!
結婚式は豪華にぱあっとやろうねぇ! 世界の村山の婚約だもん」
村山、と聞いてハッとする。私の会社のお得意様の中にも村山雄二という男が居たのだ。
「貴女まさか、村山様のご令嬢!?」
「そぉだよ〜。あ、それとねぇ。 私と藍守さんの婚約邪魔するならぁ、パパに頼んでアンタの会社との契約切るからぁ。 ……ねぇ、どうするぅ〜? あの有名ブランド『City Boy』の社長サマの城月玲子さぁん」
何かを思考している藍守に彼女は近付くと、腕を絡ませて私に微笑みを浮かべる。
「……私は、どっちも譲りたくないわ」
「残念だねぇ! どっちもあげないよぉ? あ、パパぁ? うん、そぉなの〜。取引やめてくれるぅ? ありがとぉパパ大好きぃ!」
どうやら私は不正解を選んでしまったらしい。彼女は携帯を取りだして、村山雄二と電話を簡単に済ませると嫌がる藍守を無理矢理連れて路地裏を出てしまった。
私はひとり、声を放つ。
「先生? さっきから微かに笑い声が聞こえていて耳障りだったのだけれど」
「お、わりぃな。でも面白くてしょーがねーんだよ」
ぎひひゃはぁ、と狂った様に笑うのは病院では考えられない本性を持った、あのブランド時計をしていた医師。私が仲間に引き入れたのだ。
「馬鹿言わないでくれる? 私今イライラしてるの。あの箱入り娘ごときが生意気にコイビト奪ってくんだもの」
「こっえーな」
彼も笑い、私も笑う。
守りたい物があるのなら自分の手も身体も汚して守り通す。それが世の中を生きてきた女のやり方だ。これは、私の最期の闘いだろう。
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梅藍(プロフ) - ユユリンさん» ?(°д°;)ノノ (2017年8月16日 20時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
ユユリン(プロフ) - 梅藍さん» フフふー(*´∀`) (2017年8月16日 19時) (レス) id: 09ad9bf273 (このIDを非表示/違反報告)
梅藍(プロフ) - ユユリンさん» 私のグラスが一番人数少ないんですけどねw17人です。多かったときは23人居たんですけど……!話がずれてる (2017年8月16日 16時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
ユユリン(プロフ) - ほうほう…(^ー^) (2017年8月16日 16時) (レス) id: 09ad9bf273 (このIDを非表示/違反報告)
梅藍(プロフ) - ユユリンさん» うちの学校人数少ないので、小中一貫なんです。超田舎w (2017年8月16日 12時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
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