検索窓
今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:3,941 hit

Episode 14 − 硝子夜空 ページ14

彼が眠りについてすぐに、彼女は叫んだ。

「どうして、ですか。何で貴女は彼に呼んで貰えるんですか! 私は必死に彼に着いていって、やっと隣に立てたのに! どうして!?」

「落ち着きなさいよ」

 そんなたった一言。だが彼女は怒るのをぴたりと止めて、すみませんと呟くと彼の病室を出ていってしまう。仕事中だということを思い出したのだろう。彼女は怒りながらも冷静だった。

私も彼の病室を出ていこうとすると、入れ違いで橘くんが病室に入ってきた。正直、彼と藍守さんに関係があったことには驚いたが、何も聞けずに病室を出てしまった。

だが人間、気になるものは気になる。私は彼等の話を盗み聞きするために、彼の病室の一番近くの廊下で、バレない程度に耳を壁に当てる。

「はじめまして。僕は橘 桐也。城月の部下、とでも言えば分かるでしょう。今日はひとつ、お話にきた。」

話を聞くと、彼と藍守さんは初対面らしい。だが、彼は段々と口調が変わっていく。彼は、眠っている筈なのに、まるで恨みでもあるようだ。

「なぁ、藍守さん。突然だけど、僕は一人の女性として、城月玲子が好きだ。だが、城月はアンタが好きなんだとよ。看護師の村山もアンタを好いてるんだ。そこでひとつ、聞きたい。」

何故か涙が出そうなのを必死に抑え、息を潜める。藍守さんとの会話はあまり聞こえない。

「村山か城月……アンタは、どっちを選ぶんだ? あるいは、どちらも選ばない?」

眠っている筈の彼に問い掛ける橘くんは、何時ものクールな性格とは離れていて。ドア越しの橘くんの声にギュッと胸が締め付けられる感覚がする。息が、出来ない。

「なぁ、答えてくれよ。僕だって苦しんだよ!……このままじゃ、誰も救われないだろッ!」

聞きたくない、知りたくない。彼が起きているのか眠っているのかは分からないけれど、兎に角その言葉を聞きたくなくて。段々と重たくなる身体を必死に動かして自室に戻ろうとする。

だが、足元がぐらつき倒れてしまった。

「城月さん!」

ああ、看護師。そんなに叫ばなくてもちゃんと聞こえるわ。それに、やっと貴女の名前を覚えたのよ。きっと、少しでも彼と向き合えたからね。

「……村山利香、さん。彼のこ、とッを……よろしくね」

暫く、私の病室には誰も入らせないで。

その言葉を最後に私は目を閉じる。身体が鉛のように重くて、息が苦しくて。頭が可笑しくなりそうな激痛が走った後、私はゆっくりと意識を失った。

Episode 15 − ユユリン→←Episode 13 − ユユリン



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:合作 , ユユリン , 硝子夜空   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

梅藍(プロフ) - ユユリンさん» ?(°д°;)ノノ (2017年8月16日 20時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
ユユリン(プロフ) - 梅藍さん» フフふー(*´∀`) (2017年8月16日 19時) (レス) id: 09ad9bf273 (このIDを非表示/違反報告)
梅藍(プロフ) - ユユリンさん» 私のグラスが一番人数少ないんですけどねw17人です。多かったときは23人居たんですけど……!話がずれてる (2017年8月16日 16時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
ユユリン(プロフ) - ほうほう…(^ー^) (2017年8月16日 16時) (レス) id: 09ad9bf273 (このIDを非表示/違反報告)
梅藍(プロフ) - ユユリンさん» うちの学校人数少ないので、小中一貫なんです。超田舎w (2017年8月16日 12時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:硝子夜空×ユユリン | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年8月3日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。