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Episode 2 − 硝子夜空 ページ2

「……、社長! 城月社長!」

 機械音と、小春ちゃんの心配そうな声。そして人の沢山居る気配。それを感じた私は、ゆっくりと目を見開いた。まず最初に視界に映ったのは、泣いている小春ちゃんの顔だった。

「えっと、ごめんなさい。ちょっと訳が分からないのだけれど」

腕に刺さった幾つものチューブを見ながら、首を傾げる。小春ちゃんの同僚であり私の部下である橘くんが私の身体を起こすのを手伝ってくれながら、先生、とすがるように声を出した。

「何かと混乱しているようですね。私の質問に、ゆっくりで良いですから答えてください」

医師にそう言われて、混乱している頭を無理矢理回して空っぽの返事をしながら頷く。

「貴女のお名前は?」

「城月。城月 玲子(きづき れいこ)

「失礼ですが、お年は?」

「28よ」

「この方々のお名前は?」

「小春ちゃん、それに橘くん」

そこまで質問されて、ほんの少しだけ冷静さを取り戻した私の脳が過去の事をゆっくりと思い出す。強い衝撃、それにドアベルの音。小春ちゃんとの会話。会社へと行く道、横断歩道。そこまで思い出して、記憶が繋がる感覚。

「今、やっと思い出したわ。会社に戻る間に……黒い車に横断歩道で突っ込まれたの」

 そして視界が赤く染まって、こんな事故の遭い方をするなんて馬鹿みたいって思いながら意識が途絶えていって。そこまで思い出すと、くらくらと目眩がした。慌てて小春ちゃんが支えてくれる。

「ふむ、取り合えず暫くは落ち着いていてください。整理する時間も欲しいでしょうし」

そんな私を見た医師は、私にそう提案をした。特に納得出来ないこともないので、こくりと頷くと、二人の方へ視線を向けて指示を出す。

「兎に角、貴女たちは一度会社に戻って? 沙藤様とのお食事会は小春ちゃんに任せるわ。暫く社長代理は橘くん、宜しくね」

でも、と口ごもる小春ちゃんに自宅の鍵を渡す。そして小春ちゃんが仕事を終わらせた後、何日か分の服を持ってもう一度来て欲しいと頼むと、渋々ながら会社へと戻っていった。

「では、私も一旦これで」

「ええ。ありがとうございました」

 白衣を着た名も知らぬ医師に、形ばかりの礼を告げると、途端静まる白い部屋……否、私の病室。

鈴助のドアベルの鳴る音が、無機質な部屋でリピートする。震えの止まらない身体と、回らない頭。怖い、と呟いてみれば、私の穿いていた真っ赤なハイヒールに笑われた様な気がした。

Episode 3 − ユユリン→←Episode 1 − 硝子夜空



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設定タグ:合作 , ユユリン , 硝子夜空   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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梅藍(プロフ) - ユユリンさん» ?(°д°;)ノノ (2017年8月16日 20時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
ユユリン(プロフ) - 梅藍さん» フフふー(*´∀`) (2017年8月16日 19時) (レス) id: 09ad9bf273 (このIDを非表示/違反報告)
梅藍(プロフ) - ユユリンさん» 私のグラスが一番人数少ないんですけどねw17人です。多かったときは23人居たんですけど……!話がずれてる (2017年8月16日 16時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)
ユユリン(プロフ) - ほうほう…(^ー^) (2017年8月16日 16時) (レス) id: 09ad9bf273 (このIDを非表示/違反報告)
梅藍(プロフ) - ユユリンさん» うちの学校人数少ないので、小中一貫なんです。超田舎w (2017年8月16日 12時) (レス) id: 21e7bc37aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:硝子夜空×ユユリン | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年8月3日 19時

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