122話 ページ49
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「「はぁ!?青城戦でA自身を賭けてただぁ!?!?」」
「ちょ、うるさ」
バスの中でキーンと響く田中と西谷の声に、思わず成宮は耳をふさぐ。
叫んだのはこの2人だけであっても、事情を知らなかった菅原以外の者たちも気持ちは同じ。
目を丸くする者、口をあんぐり開ける者、不機嫌そうに彼女を睨む者などと各々の反応を見せた。
「A、おまっ、お前ー!なんで勝手にそんな約束してんだよ!」
「落ち着いてよ日向。実際みんな勝ったじゃん?私は信じてたよ」
「ぐぬぬ〜そうだけど!!おい月島!お前からも何か言えよー!」
「は?何で僕が」
「お前いつもAのことは色々うるさいだろ!」
日向のストレートすぎる回答に、思い切り嫌そうに顔を顰める月島。
目が合った成宮も困ったように眉を下げて笑う。
「…馬鹿がとんでもないこと言い出すのなんて今に始まったことじゃないし」
「およ?珍しく優しいねツッキー」
「僕らに出来ることなんて、今まで通りじゃじゃ馬の尻尾を掴んでおくくらいデショ」
「あっはは確かに!ほら成宮さんの尻尾だよ〜」
そう言って、後ろで一つに結ってある長い髪を彼女が揺らせば、イラついた月島はぐいーっとそれを引っ張る。
涙目で「いった!?冗談じゃん!」と懇願するも、横からそれに影山の力も加わった。
「痛っ!トビちゃん今ガチで引っ張ったでしょ!?髪もげるわ!」
「うるせーボゲ!二度とそんなアホな約束すんじゃねーぞ」
「わーかったよ。全くトビちゃんったらツンデレさんなんだから〜」
「あ?」
「ちょ、痛い!ハゲる!ごめんってーー!!」
烏野には、誰一人とて彼女を失っても良いと思っている者はいない。
不器用ながらも影山もそれを全力で伝えていたのだ。
それが分かるからこそ、彼女は嬉しいような、それでいて泣きそうなくらい悲しいような気持ちになる。
「…そろそろ潮時かなぁ」
やがてバスが出発し、静かになるにつれて疲労しきった彼らはぐっすりと眠りにつく。
その愛らしく幼い寝顔を見てふっと微笑んだ彼女は、そう一言だけ呟き、頬づえをつきながら窓の外を見上げる。
その日は眩しいくらい、紅く染まった夕焼けが輝いていた。
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おもち。(プロフ) - ルイさん» 本当ですか!嬉しいです(^^♪最終章まで楽しませていただきます(*´`) (2020年4月17日 1時) (レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - おもち。さん» わぁぁ!おもち。さん、とても嬉しいお言葉ありがとうございます!!最終章まで近いですが頑張ります♪(おもち。さんの素敵な小説も拝見させて頂いております(*´ω`*)) (2020年4月16日 21時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
おもち。(プロフ) - 今まで読んできた小説の中で内容や設定1番好きかもしれません……!展開の魅せかたがめっちゃ好きです!!更新頑張ってください! (2020年4月16日 16時) (レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - 佑奈さん» 佑奈さんありがとうございます!赤葦くんかっこいいですよね…!次の章からはまた登場予定なので楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです! (2020年4月15日 1時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
佑奈(プロフ) - このお話の赤葦くん好き… (2020年4月14日 15時) (レス) id: 174bbcca55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルイ | 作成日時:2016年7月4日 15時