121話 ページ48
＊
そして、試合は及川の強烈なサーブから始まる。
隣で谷地は「腕もげそう…」なんて震えながら漏らし、成宮もくすりと笑う。
だが、彼女とて笑っている余裕も次第になくなっていく。
「あぁぁ第二セット取られたー！！」
町内会メンバーや田中の姉の叫び声で、すっと目を細めた彼女は得点板を見つめる。
「第一セットこっちが先取後、第二セットが28-26か…ふむ」
青城スタメンたちの実力も以前彼女が練習に参加した時とは比にはならないほど磨かれており、彼女は思わず舌を巻いた。
「ふむってアンタねー！ったく何でそんなに冷静なのよマセガキが」
「ん〜？そうでもないですよ冴子姐さん。ただ、慣れない3セットとなると体力的にもきついでしょうし…ふふっ」
「うわ何笑ってんのよ気色悪い！」
「姐さんひどい！？うーん…ま、本当に追い詰められた時こそ人間は持てる力以上のものを発揮するので、ワクワクはしていますね」
「変態かよ…」
「失礼ですね！」
3セット目の出だしから、先ほどよりも強烈なサーブを打ってきた及川に会場がどよめく。
彼の鬼気迫る表情を見て、本気なのだと。
彼は本気でこのチームで全国に行き、そして自分のことも手に入れるつもりなのだと分かった。
「あはっ…誰よ及川さんを天才じゃないなんて言ったの。彼、いいもん持ってるじゃん」
「Aちゃん？何か言った？」
“凡人が真似できないような努力をした者”
それが天賦の才を開花させる者だ。
それで言えば、及川は十分に成宮の中で天才だと認めざるを得なかった。
「んや、なんでもないよひーちゃん。…よし、一緒に応援頑張ろっか！」
「うん！」
普段は谷地たちと離れた場所で観ることが多い成宮がこうして側で仲間を応援しようとしてくれていることが嬉しく、谷地はぱぁと顔を明るくさせた。
その素直な反応が可愛くてぽんぽんと彼女の頭を優しく撫でた成宮は、持っていたメモをパタンと閉じる。
「みんなー！！ここで流れ変えてこー！」
「が、頑張れー！」
成宮と谷地の元気な声が響き、選手たちの表情も明るくなる。
羽を癒した烏は、どこまでも遠く遠く羽ばたいていけるのだと、彼女らはもう知っていた。
そして、死闘を繰り広げた末ついに。
ピピーッ！
「…やるじゃん日向」
「ッAちゃん！Aちゃん〜〜！！」
抱き着いて来た谷地を優しく受け止める。
最後の一球は前回のリベンジを果たすが如く、影山と日向の速攻で決まった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 633人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おもち。(プロフ) - ルイさん» 本当ですか！嬉しいです(^^♪最終章まで楽しませていただきます(*´`) (2020年4月17日 1時) (
レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - おもち。さん» わぁぁ！おもち。さん、とても嬉しいお言葉ありがとうございます！！最終章まで近いですが頑張ります♪（おもち。さんの素敵な小説も拝見させて頂いております(*´ω`*)） (2020年4月16日 21時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
おもち。(プロフ) - 今まで読んできた小説の中で内容や設定1番好きかもしれません……！展開の魅せかたがめっちゃ好きです！！更新頑張ってください！ (2020年4月16日 16時) (レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - 佑奈さん» 佑奈さんありがとうございます！赤葦くんかっこいいですよね…！次の章からはまた登場予定なので楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです！ (2020年4月15日 1時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
佑奈(プロフ) - このお話の赤葦くん好き… (2020年4月14日 15時) (レス) id: 174bbcca55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルイ | 作成日時：2016年7月4日 15時
