117話 ページ44
「お待たせ!行くぞ〜」
「あ、はい。スガママさん、今日は本当にありがとうございました」
「いいえ〜。また待ってるわね!」
にこりと人の良い笑みを浮かべる菅原母に頭を下げ、先に出た菅原にトコトコと付いていく。
そして、とあるものの前で止まりくるりと振り返った彼の顔を見て、目を丸くする。
「え、と…?」
「二人乗り、しちゃうか!」
にししと笑った菅原は自転車をいそいそと出した。
彼女が最終的にうんと言うことを分かっている辺り、彼もなかなか策士になったものだ。
「いいんです?見つかったら怒られますよ〜?」
「うん、だから二人だけの秘密な!」
「もー本当にずるい人だなぁ」
彼女の肯定の意を汲み取りサドルに跨った菅原は、後ろをペシペシと叩く。
「失礼します」とそこへ座った彼女は遠慮がちに彼の腰に腕を回したが、すぐに菅原は彼女の手の上から自分の手を重ねて力を込める。
「ちゃんと捕まんないと危ないだろ?」
自分より一回り大きい手の感触に、いくら優しくともやはりこの人も男なのだと実感し、成宮はわずかに胸を鳴らした。
彼女の荷物を前の籠に入れ、ゆっくりとペダルを漕ぎ始めた菅原は嬉しそうな声を出す。
「あ〜夜風って気持ちいいな!俺、好きな子と二人乗りってちょっと憧れだったんだよなぁ」
「ふふっスガさん意外とベタなんですね」
「嫌?」
「まさか。可愛いなと思っただけです」
綺麗な長い髪をなびかせながら、彼女は可愛らしい笑い声をあげる。
大通りを避けて走っているからか周りには人っこ一人歩いておらず、菅原はまるでこの世界に二人だけになったかのような錯覚に陥りそうだった。
「なぁA、一つ聞いていい?」
「はい?」
二人の間に訪れたわずかな静寂の後、彼は口を開いた。
彼女が家に来て食事を共にし、ずっと気になっていたこと。
「メシの後に飲んでた薬…あれ、何?」
その瞬間、わずかに自分の腰に回る彼女の小さい手が反応した。
そう、彼女は食後に自分が席を外した隙を狙い、何か薬のようなものを口にしていたのだった。
偶然にもその光景を目にしてしまい、菅原は聞くべきか迷ったが、やはりこのままにしておくにはいささか心に棘が刺さったような感覚が拭えなかったのだ。
「うーん…痛み止めです」
「痛み止め?何で?」
「言いづらいんですが…ほら、女の子には男の子にないのが色々あるじゃないですか」
「…?え、あっ!?待っ、そういう!?」
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おもち。(プロフ) - ルイさん» 本当ですか!嬉しいです(^^♪最終章まで楽しませていただきます(*´`) (2020年4月17日 1時) (レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - おもち。さん» わぁぁ!おもち。さん、とても嬉しいお言葉ありがとうございます!!最終章まで近いですが頑張ります♪(おもち。さんの素敵な小説も拝見させて頂いております(*´ω`*)) (2020年4月16日 21時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
おもち。(プロフ) - 今まで読んできた小説の中で内容や設定1番好きかもしれません……!展開の魅せかたがめっちゃ好きです!!更新頑張ってください! (2020年4月16日 16時) (レス) id: 753b9a62df (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - 佑奈さん» 佑奈さんありがとうございます!赤葦くんかっこいいですよね…!次の章からはまた登場予定なので楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです! (2020年4月15日 1時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
佑奈(プロフ) - このお話の赤葦くん好き… (2020年4月14日 15時) (レス) id: 174bbcca55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルイ | 作成日時:2016年7月4日 15時